F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊 脇道」(エドロイVer.) > 「遊 脇道」Act.10
「遊 脇道」Act.10
08.12.21up
「たらいま〜。」
久々の帰宅だ。
「あら。めずらしい。エドも来たの。」
母さん、久しぶりに帰った息子に『来た』か。
そうか。
「ああ。オジャマシマスっと。」
「エド、久しぶりだな。マスタング君も来るのかね?」
親父もエプロン姿で出てきた。
「ああ。後で来る。って、なにしてんだ?料理?」
オレ達は家事を仕込まれたが、親父はあまり家事をしない。
元々母さんが家事の好きな専業主婦だったからってこともあるだろうが。

「いや、スクリーントーンやインクやらで結構服が汚れるんでな。」
「はあ!?」
ナニそれ?
「父さんって、名アシスタントなんだよ。
 ベタとトーン張りが上手なんだ。」
アルが答える。
「アシスタント?なんの?」
「ウィンリィとシェスカの同人誌だ。
 父さんヒマだからなんの気無しに手伝ったら、凄く上手だって言われて今専属アシスタントやってるんだよ。
 いやぁモテる男はつらいな。」
にやにやと話すこの中年親父はいったい…。

「同人誌って、あのホモの!?」
「「「そう。」」」
3人が同時に言う。
待て待て待て!
「それってオレとショチョウの話だよな?みんな読んでるのか!?」
自分の息子のホモ話を!?
「「「うん。」」」
同時に頷くなーーーー!!!

「母さん!?
 母さんまでそんなの読んでんの? 本当に?」
「ええ。結構面白いわよ。でも現実とは違うのね。
 母さん、すっかりお嫁さんなエドを楽しんでたのに。」
はあ?

「ウィンリィは来てるのか?」
あいつ…とんでもねぇ話書いてんじゃないか!?
「ああ。エドの部屋が今制作室になってるから、居るよ。」
だいたいなんで人んちでやるんだよ!
だかだかと階段を駆け上ってオレの部屋に行く。

「おい!ウィン…」
スタン!
とオレの顔の横の壁にナニかが飛んできて刺さった。
恐る恐る見るとそれはペンだった。
びぃぃぃん、とまだペン軸が揺れている。
こんなのが目に刺さったら死ぬぞ!?
「いきなりなにす…」
「あんた!『攻め』ってホントなの!?」
オレ以上の迫力でウィンリィが怒鳴りつけてきた。
「ああ!?なに言って…」
「冗談じゃないわよ!あんたが『受け』ってことでペン入れまでしてるのに!」
「まあまあウィンリィ、落ち着いて…。」
となりでシェスカが宥めている。
「訳解んねぇこと言ってんなよ!」

後から親父とアルが部屋に入ってきた。
「ウィンリィ、ペンは投げたら危ないよ。」
のんびりした親父の声が張りつめた空気を緩ませる。
「おじさん…ごめんなさい。」
なんで親父には素直なんだよ!?
「で…なに怒ってんだよ。」
溜め息をついてウィンリィに聞く。
怒ってんのはオレなんだけど。

「…そうよ。なんであんたが『攻め』なのよ!」
「なんだよ。その『攻め』ってのはよ?」
「ああ。抱く方の人の呼び方ですよ。ま、挿れる方ってことですね。」
にっこり笑ってシェスカが言う。
うんうん。その笑顔はかわいいけどな、言ってるこたぁエグいぞ?
「すると『受け』ってのは抱かれる方か?」
「そうそう。」
嬉しそうだな。アル。なんでだ?

「小さい方、女顔の方、もしくはかわいい方が抱かれるのよ!
 だったらあんたが『受け』に決まってんでしょ!?」
決まってんのか?
オレには解んねぇ世界だよ。

「そりゃ、オレの方が背は少し小さいけど。
 女顔はあっちだろう。あんな美人はいねぇぞ?
 あんな甘えたかわいいヤツもな。」
…あれ?
なんでみんな固まってんだ?

「愛だよねぇ。」
ほややんとしたアルの声に金縛りが解けたようだ。
「あんた…本当に『攻め』なのね…。」
がっくりと両手をテーブルに付いて俯いている。
哀しいのか?なんでそんな哀しそうなんだ?ウィンリィ?

「なんだよ。どうしてそれがそんなに問題なんだ?
 だいたいオレ達のことなんか、お前等に関係ないだろう?」
がっ!と上げるその顔が怖い。
「もうあんたが『受け』で描いちゃってるんだってば!
 あたしはリアリティを追求したいのよ!」
リアルなホモなんてイヤじゃないか?
いや、オレは言える立場じゃねぇけど。

「ま、いいわ。許してあげる。その代わり詳しく教えなさいよ!」
「なんでオレがお前に許して貰う必要があんだよ?
 教えるってなにをだ?」
「実体験に決まってるでしょ!こんな機会めったにないのよ!」
「誰が教えるかぁぁあああ!!!!」
ダメだ。血管切れそうだ。

「お紅茶が入ったわよ。」
にこにことトレイを手に母さんが入ってきた。
「なに叫んでるの?エド。ご近所に丸聞こえよ?」
町内どころか全国的にオレのホモ話は広がってるらしいぜ?母さん。
「まあ、やるからにはリアリティを追求したいって気持ちは解って下さいよ。」
シェスカ、だから声と顔はかわいいけど、求めてるモノがエグいって。

「そうよ!目指せ『壁サークル』!
 タカベカ目指してリアリティを追求するのよ!」
「タカベカ?」
「これです。伝説級のサークルさんなんですよ。
 壁中の壁サークルと呼ばれてましてね。
 リアルでエロくて、これで私たちもどっぷりハマったんです。」

シェスカが渡してくれたその冊子は
『実録 公務員シリーズ 〜翼をもがれた金色の天使〜 R18』の文字が。
『サークル名 鷹&ベッカ』か。
ホークアイさん…ひねりがねぇな。
レベッカさんも。
いいのか?公務員(一人は『元』だけど。)が、こんなことしてて。

「まだまだあるわよ!何年も前から並んで買いまくったからね。」
その手の先には『公務員シリーズ』がどっさり積まれていた。

「原価がどの位かかるのかしらないけど…。結構な儲けになりそうだな。」
思わず計算しかけてオレは頭を振った。
「うん。印刷とかの金額は出てるから、ボクもざっと計算してみたよ。
 損益分岐点は今回40冊を超えるあたりかな。」
「人件費と家賃がかからないのは大きいよな。」
やっぱり無意識にアルも親父も計算していたらしい。

「本当に助かるわー。コスト管理までやってくれるから。
 値段決めるのもおじさんにお願いしたのよ。」
顧問料も払わないクセに。
お前等ちゃんとこの儲け、確定申告すんのか?


「でさ。…どうなのよ?」
「あ?なにがだよ?」
シェスカと親父とアルは、オレの部屋に持ち込んであるテーブルで制作作業に精を出している。
オレは残されていたベッドにウィンリィと並んで紅茶を飲んでいた。

「愛の営み〜♪」
にやにや笑うな。女がする顔じゃねぇぞ。
「キモい言い方すんな!」
「いいじゃない。教えてよ。」
「やだっつったろ?他人に話すようなことじゃねぇ。」
ぷい、とウィンリィに背を向ける。

「なによ。ケチ!スケベ!」
「スケベってなんだよ?」
ウィンリィが背後から耳元に口を寄せてきた。
「…あんなかわいいあいつの喘ぎ声…オレだけのモノだ。誰にも教えない…。」
「うわぁぁあ!!な…なに言って…!!!」
低い声で囁いたウィンリィに思わず振り返ってしまった。
「図星ね。顔が真っ赤よ。」
ふふん、と偉そうに笑う。
「てかなんだよ!?そのこっ恥ずかしい表現!」
「あら。こんなの普通よ。フツー。」
う…。オレも確かにそう思ったかも。
しかもあいつに言ったかも…。
今度は恥ずかしさで血管が切れそうだ。

「ウィンリィ。ここの表現どうするの?」
シェスカが呼んだ。
「ほら。行けよ。」
ホッとしてウィンリィを追い遣る。
オレ、ここにいんのやめよう。
マグを片手に階下へ逃げた。

ダイニングのテーブルに座って盛大に溜め息をついたオレに、母さんが紅茶を足してくれた。
「で、どう?生活の方は。」
落ち着いた声になんか安心する。
「ん。始めたばっかだからまだ解んないけど、まあまあかな。」
「アゴ、どうしたの?
 まさかDVなんてことじゃないわよね?」
「ん?ああ。ぶつけたんだ。
 …母さん、DVってのはヤオイ用語じゃないよな?」
「いやね。ドメスティック・バイオレンス。家庭内暴力よ。最近そういうんですって。」

ああ。よかった。普通の話題だ。
って母さん、今さらりと流したけど『ヤオイ用語』って言葉は知ってるんだな?
オレんちがどんどん腐っていく…。
しかも家族構成は男の方が多いのに…。

「年明けから忙しくなるでしょ?晩ご飯食べにいらっしゃいね。」
「ああ。頼むな。あいつにまともなモン食べさせないと。」
「今日は食べて行かれるんでしょう?最近母さんは『メシスタント』って呼ばれてるのよ。
 炊き出し隊長ね。」
楽しそうに笑う。
あんなもんでも(って読んだことないけど。)母さんが楽しいんならいいか。
オレ達は仕事が忙しくてあまり家にいなかったからな。
ウィンリィたちがいて騒ぐのが嬉しいのかも知れない。

「あ、そうだ。今日鹿肉があるんだ。」
カバンの横に置きっぱなしだった袋を手渡す。
「鹿?まためずらしいわね。」
母さん見るの初めてよ、としげしげ見つめている。
オレは鹿肉を貰った経緯とその調理法を説明した。

今日はそれを使ってシチューを作ることにした。
ステーキにするには足りなかったからだ。(意外にウィンリィとシェスカは大食いだ。)
生で食べられる肉は、スライスした玉ネギとホースラディッシュを薬味にしよう。

食事の用意を始めようかと立ち上がり掛けたオレに
「でね。エド。」
母さんが真っ直ぐにオレを見つめて言う。
「ん?なに真面目な顔して。」
オレはまた座り直した。

「本当にエドが『攻め』なの?」
「か…母さん?」
「母さんはエドがお嫁さんになる方に賭けてたのに。残念だわ。」
そういやそんな話も聞いたな。
どいつもこいつも…。
「母さん、自分の息子が男にヤられんのなんてイヤじゃないの?」
「あら。どっちにしたってどちらかはされるんでしょ?
 慣れると気持ちいいって書いてあったわよ?」
母さん? 母さん!?

「な…ナニに?」
「公務員シリーズに。
 とても職場の描写も詳しくて楽しいわね。あれ。
 色々なシチュエーションで愛し合う二人がエドとロイさんに似てて、とても面白いのよ。」
色々なシチュエーション…色々なシチュエーション…。
どどどどんなんだぁあ!?
うわ。マズい。ちょっと興味有るかも。

あ、待て。
公務員シリーズはどっちが受けなんだ?
「そのシリーズは、どっちがどっちなの?」
「金髪金目で美貌の国税局査察課長が『攻め』でね。
 公認会計士事務所に勤務している補助税理士が黒髪黒目で『受け』なの。
 お互いの職業上の立場から、公に出来ない忍び愛でね。
 その税理士が女性にモテモテなくせに査察課長にだけ『誘い受け』で、どこまでも強気かと思うと急に甘えたりして素敵なのよ♪」

税理士事務所(これがオレの現状だ。)ではなく、公認会計士事務所で補助税理士ってのはオレとは解らないようにしてるんだろうけど、逆に妙にリアルだな。
そんでまた査察課長とは。
マニアックなあたりを選んでるな。ホークアイさんたち。
確かに税務署長以上に税理士と馴れ合うわけにはいかないから盛り上がりそうだ。

しかしそれじゃオレとあいつのどっちが攻めかは解らないな。
…読んでみるか。
しかしイッキに説明してくれたな。母さん。
随分読み込んでいるんだね…。


夕食を母さんと作り終わろうかという時分に男がやってきた。
「おー。おかえり。」
迎えに出たオレの姿を嬉しそうに眺めている。
「ただいま。
 …エプロン姿がまたいいな。うちでもしてくれたまえよ。」
「あんなフリフリじゃなけりゃな。」

「おかえりなさい。疲れたでしょう。」
母さんも玄関に来た。
「ただいま帰りました。いい香りですね。」
見事な爽やかスマイルだ。
「ロイさんに戴いた鹿肉をシチューにしたのよ。
 もう出来るけれど、お風呂の方がいいかしら?」
「いえ。風呂は帰ってから入りますので結構です。
 あれは私も貰った物です。食べて戴けて助かりました。」
答えたところに、2階からどたどたと足音が降ってきた。

「ロイさん!?本物!?」
きゃーーー!!
と二人の悲鳴が聞こえた。
「なんだよ!うるせーぞ!」
なんでこいつに悲鳴をあげるんだ?
「お話し聞かせて下さい!あ、写真もお願いします!!」
「とにかく2階に!!」
「な…センセイ?」
問いかけるような目を向けてくるがオレにも解らない。

「おい!お前等落ち着け!
 こいつが困ってるだろう?」
じたばたするウィンリィとシェスカの襟を掴んで下がらせた。
「だってだって!公務員シリーズのモデルなんでしょ?
 本物でしょ!?」
なんでそれを…。

「アル!」
階段にいたアルに怒鳴る。
「お前だろ!話したの!!」
「あんまり熱心だからつい…さ。」
全然反省してないだろ?
アルの物事の判断基準は『面白いか、面白くないか。』だ。
「全く、アル!こいつの迷惑を考えろよな。
 ほら、お前等も下がれってば。
 ウィンリィ!こいつに触るな!」
腕を掴んで離れさせる。

「ナニよう!減るモンじゃなし!ケチケチしないでよ!」
てっ!
向こう臑にケリを喰らった。
「てめ!ナニしやがる!」
玄関の壁に向かって投げ出すように腕を放してやった。
もちろん強くぶつからない程度にだ。

「あんたが邪魔してんでしょ!?」
見事な回転キックだが、予測済みなのでその足首を掴んで上方向に流す。
ウィンリィは軽く受け身を決めて、すぐ上半身を起こした。
小さいときから組み手をしているお互いの動きは解っている。

「ああセンセイ。ご婦人へそんな乱暴をするものではないよ。」
男がウィンリィに手をさしのべた。
「乱暴してんのはこいつだろ?」
「やっぱり優しいんですね!」
シェスカがうわずった声を挙げる。
「ホーント。エドとは大違い。
 あ、大丈夫です♪」
なにカワイコぶった声出してんだよ?
「だからこいつに触るなっつってんだろ!」
立ち上がって尚かつ、男の腕に触れようとするウィンリィの手をはたき落とした。

「なによ!あんたさっきっから。
 そんなにロイさんを独り占めしたいわけ?」
腰に手をあてて、アゴを挙げ気味に言うその姿は悪者にしか見えねぇぞ?ウィンリィ。
「当たり前だ。こいつはオレのモンだ。勝手に触るな。」
「ガキ!ナニみっともないこと言ってんのよ!」
ねーえ!とシェスカと頷きあっている。
相変わらず小憎らしいアマだぜ。

「ロイさん、お話し聞かせて下さい!」
「是非写真もお願いします!」
「お前等少しは遠慮しろ!
 こいつは帰ったばっかで疲れてるんだって!」
「あんたは引っ込んでなさいよ!」
「静かにしたまえ!」
永遠にループしそうな会話に呆れたのか、男が大きめの声を出す。
さすがに全員が黙った。

「状況がよく解らないのだが、話をするのは構わない。
 ただ申し訳ないけれど、センセイが厭だという限りは私に触れないで貰えるかな?」
淑女に向けるような極上の笑顔で二人に告げる。
「エドが…嫌がるから?」
笑顔にヤられたのか、呆けた声でウィンリィが呟く。

「ああ、そうだ。私はセンセイのものだからね。」
更ににっこりと笑いかけると、シェスカとウィンリィが震えだした。
瘧(おこり)か?
大丈夫か?お前等。

「う…うわぁああ!萌えぇぇぇええ!!」
「すごい!すごい萌えたね!今!!」
「うんうん!萌えたよぉぉお!!!」

『モエタ』とは、発火、炎上していると言うことだろうか。
確かにオレも今、イッキに体温が上がったけど。
あ、すごく嬉しくてちょっと下半身にキかかってる。
ヤヴァイかも。
しかし今こいつから離れるのは不安が残る。
こんな女どもにどんなこと聞かれるのか。
そんでどう答えるのかは是非把握しておきたい気がしてならない。




Act.11

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