F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊 脇道」(エドロイVer.) > 「遊 脇道」Act.31
「遊 脇道」Act.31
08.12.24up
なにか豪華な夕メシでも作ろうかと思ったが、男が少しでも多く話をしたいからデリバリーにしようと言い、結局ピザをとった。
サイドメニューのサラダを食べることを条件に。

「あ!?」
ハッシュポテトにフォークを突き刺した時に思い出した。
「あんた昔はオレに野菜食え食えっつってたじゃん。
 ナニ今は食わないわけ?」
ああ、とばつの悪そうな顔をする。
「君はずっと旅暮らしで外食ばかりだっただろう?
 だから私のところにいる時くらいは野菜を食べさせなくてはと思っていたんだ。
 まだ成長期…なのに成長していなかったしな。」
「だーれが!!!
 …って、怒ったな。昔なら。」
2人で笑い出す。

「ああ。懐かしいな。時折揶揄していたんだが、君が全く反応しなくて寂しかったよ。」
「ん?そうだったのか?気が付かなかったな。」
「いや、実際今は小さくないのだから気付きはしないだろう。」
それもそうか。

「あ!しかもあんた料理できたじゃんよ!」
瞳をそらすな!!
更に詰め寄ると笑いながら降参とばかりに両手を挙げる
「元々得意ではなかったよ。
 君が作ってくれるのが嬉しくてね。とても美味しいし。
 それに最近の器具はどうもよく解らない。
 この時代になって一度も料理をしたことはないんだ。」

ずっと騙されてたぜ。
「今度から当番制な。大体家事だって一通り自分でこなしてたじゃんか。」
「うっ。そうくるか。
 …解った。機械の使い方を教えてくれたまえ。」
よっしゃ。これで負担が減ったな。
別に全部やってやったっていいんだけどさ。
確定申告時期はちとつらい。
その後も思い出すままにいろいろな思い出話を続けた。

男は当然のようにオレを風呂に連れ込み、一緒に入った。
そうだよ。この強引さは大佐だよ。
「あんた態度違わねぇ?」
ホントはそんな強気な態度が嬉しいけどな。
やっぱ元気な方が安心できる。
「ん?そうだな。
 センセイと鋼のとではやはり接し方が変わるだろう。
 センセイは以前のことを知らないのだから。
 鋼のは私の直属の部下だったし、付き合いも長いしな。」
それもそうだが。

オレは男のうなじに腕を廻した。
「恋人としての付き合いも長いし?」
耳元に囁くと
「そういうことだ。」
照れもせず逆にオレの耳朶に舌を匍わせてきた。
か…かわいさも半減してる!?

いや、言葉に弱いのは昔からなんだ。
根本的に羞恥心を煽られると弱いとこは変わらない…ハズ!
それでもベッドに入ってから2人ともなんとなく触れ合うよりも話がしたかった。
ただ抱きしめあって時折軽いキスを交わしながら昔の話をしていた。

「なあ。もしかして。」
ふと疑問が浮かんだ。
「ん?なんだね?」
オレの髪を弄びながら問い返す。
「あんたがやたらと抱かれたがったのって慣れる為もあったんだろうけど、思い出させようとしてた?」
一番デジャヴを感じたのはこいつを抱いている時だった。

「ああ。そうだ。
 君は最初から私の感じるところが解っていただろう?
 本能に近い行為でもあるしな。」
「そうか。無理させちゃってごめんな。」
「無理などしていないが?」
「毎日吐いて熱出してただろ?
 昔はもっと間隔が空いてたじゃないか。」
2週とか長いと2ヶ月にいっぺんとかだったよな。
オレ、結構淡泊だったんだな。
まあガキだったし、アルのことも有ってそれどころじゃなかったしな。

「そうだな。だから以前は慣れるまでに時間がかかったよ。
 熱を出さなくなるまでに1年近く掛かった気がする。」
マジで!?
「え!? そんな長いこと熱出してたのか?
 あ、吐くのも?オレに気付かれないように終わった後吐いてたのか?」
「いや、すまない。少し大げさだったな。
 しかし続けて抱かれた方が早く慣れることができるのは事実だ。
 あの頃は君が来る度に中尉に頼み込んで翌日の休暇をもぎ取ってたからな。
 今度の方がずっと楽だったよ。」
「そか。でもあんたが感じるようになって嬉しいよ。
 つらい思いはもうさせたくない。」
ふ、と笑ってオレにキスをする。

しばらく2人ともナニも言わなかった。
昔のことを考えていたのかも知れない。
「エドワード?」
ふと男が口を開いた。

「ん?」
「私はこのまま幸福になれるのだろうか。」
その口調はどこかつらそうだった。
「あ?今のオレじゃ不満か?」
それを払拭させたくてワザと明るく言う。
「いや。そうではない。
 …何のために生きているのか解らなかったと言っただろう?」
「ああ。」
確かにそう聞いた。
オレに出逢うまでのこいつの人生は。

「あれは嘘なんだ。
 本当は…贖罪のために産まれたのだと思っていた。」
「…どうして?」
「幼いころから悪夢ばかり…自分の犯した罪の夢ばかり見ていた。
 私の焔に焼かれて死んでいく沢山の人々の夢。
 ウィンリィ嬢のご両親を殺した夢。
 ヒューズの葬儀の夢。
 そして…まあ、…色々だ。」
このまま話させていいんだろうか。
いや、逆に話す気になったんだから、遮らない方がいいのかも知れない。
オレは黙って次の言葉を待った。

「そして私にはその夢の意味が解っていた。
 かつて自分が犯した罪なのだと。
 だから…私は一度の人生では償いきれなかった罪の為に、新たな生を受けたのだと思っていた。
 錬金術を使えず、理想や目標を持つこともできず。
 この国は今、平和だから。
 この罪を受け容れて、苛まれて生き続けるしかないのだと。
 …いつか…赦される日まで。」
ああ。この前の
『なにもかも忘れたい。もう赦されたい。』というのはこれを言っていたのか。

「それでも、あの時計を見付けて『金色』が認識できるようになったとき、少しは赦されたのかと思った。
 それは君を思い出させてくれたから。
 そして、君に逢えるのかも知れないと希望が持てたから。
 一番欲しいものに出逢えて、もう赦されるのかも知れないと。」
そうだ。
あれは『オレの』時計だ。
あの刻まれた文字はオレが家を焼いた日。

「最初は区役所に勤めようかと思った。」
いきなり話題が変わった?
「区役所?」
「ああ。君が産まれてくることをなんとかして知りたかった。
 どこに産まれているのか。
 しかし、区役所ではその区の情報しか解らない。
 そこで税務署を選んだんだ。
 広範囲の個人情報が手に入るからな。」
そんな理由で税務署に勤めたのか!?

「運良くセントラル税務署の管轄内にホーエンハイム氏がいた。
 申告書を見ると配偶者はトリシャさんで、扶養親族に君とアルフォンス君の名前があった。
 嬉しかったよ。
 すぐにでも逢いに行きたかったが、なんの理由もなく逢いに行っても怪しまれるだけだろう。
 自分の職務で逢いに行こうとした。
 しかし残念ながらホーエンハイム氏は税理士だった。
 税理士に調査を入れにくいことは君も知っているだろう?」
「…ああ。」

税務署と税理士は仕事上は敵対している。
けど、無料相談や講習などを頼む関係上、税務署としては税理士にケンカはなるべく売りたくない。
まあ、こちらとしても税務署と仲違いをして厳しい調査に入られるのも厭だから、なるべく穏便にいきたいしな。
結果として税理士には調査はほとんど入らない。
入っても人生で一回が常識だ。

「加えてホーエンハイム氏は仲々のやり手で、税理士会内でもかなりの影響力を持っている。
 おいそれと調査になど行かれる相手ではなかったんだ。
 そこで個人課税部門の統括にまで最短でのし上がって、ホーエンハイム氏の調査に強引に踏み切った。
 勿論反対はされたよ。
 付いてくるのを承諾してくれた調査官は中尉…ホークアイ君だけだった。」
オレに逢うためだけに?
その為だけに若くして統括にまでなったのか?

「ようやく逢えた日のことは忘れられない。
 君に逢えた嬉しさのあまり、調査報告書を空白のまま提出しようとしてホークアイ君に殺されそうになった。
 あの日からだ。
 彼女が私を『無能』と呼ぶようになったのは。」
ああ、ここ笑うところだよな。
これは笑い話だったのか?

「そして根掘り葉掘りその調査の意味を聞かれてな。
 君を愛しているのだと彼女に白状したんだ。」
はあ?
「オレを愛してるって、中尉に言ったのか?
 中尉は昔の記憶がないんだよな?
 オレ9歳だったぞ?
 あんた、変質者扱いされなかったか?」
「ああ。しかし私が無理にでもホーエンハイム氏の調査をしようとしていた時点で思うところがあったらしい。
 彼女は『ショタは趣味ではない。エドワード君が育ったらモデルに戴く。』と言っただけだったぞ?」
ショタって、ナニ?

「今こうして君と一緒にいられる。
 これはもう赦されたと言うことなのだろうか。
 それとも罪を償いきれない私はもう一度罰を受けるのだろうか。」
寂しそうに笑う。
「罰って?」
ナニを差すんだ?

「君をもう一度失うことだよ。
 私にとってそれ以上の罰はない。」
ふつりと男はそこで言葉を切った。
きっとまたその時には泡になりたいと願っているんだろう。
オレが厭がるから口にしないだけで。

沈黙が続いた。
「オレはさ。」
「ん?」
こいつを救えると思うほど自分を過信してはいない。
でも伝えたい言葉があった。

「オレは、人が産まれてくるのは『幸福になる為』だと思う。」
「…。」
「人は『幸福になる為』に産まれてきて、『幸福になる為』に努力するもんだと思ってるんだよ。」
オレは本当に甘いのかも知れないけど。

「あんたはもう人を殺す為の焔を持ってない。
 この国を救う為に軍に入って、その為に人を殺す命令を受けることもない。
 …あんたの焔は人を殺す為だけのモンじゃなかったけどな?
 イシュヴァール人の集落で、誰も殺さない為に焔を使ったろ?
 後から聞いたよ。」
絶対的な力の差を見せつけることで反抗をさせず誰も殺さずにその場を収めたと。

「オレも…罪を犯したよ?母さんの人体錬成を試みて。
 でも、今母さんもオヤジもいる。
 アルだって生身の躰で生きている。
 ウィンリィの両親だって健在だ。
 それはもう…過去の罪を赦されて、今度は『幸福になる為』に産まれてきたからなんじゃないのか?」
「エドワード…。」

「オレの記憶が無かった理由は解らない。
 でも、あんたが記憶をずっと持ってたってのは、オレを探す為じゃないのか?
 オレの存在がホントにあんたを幸福にするのか、オレには解らないけど。
 けど、もしそうならあんたの記憶が残っていたのは、オレを探し出してあんたが『幸福になる為』だったんじゃないのか?」

「エドワード。
 …そう…思ってくれるのか?
 本当に?」
「ああ。オレはあんたが今産まれたのも、『幸福になる為』だと思う。
 罪を償う為なんかじゃなくて。
 オレはそう思うんだよ。」

「嬉しいよ…。エドワード。
 私はもう赦されているのだろうか?」
「ああ。オレはそう思う。
 ロイ、一緒に幸福になろう?
 かつて出来なかった幸福な日々を一緒に送ろう?」

男はオレを抱きしめて
そして泣いた。
静かに。
長い長い時間泣き続けた。


「ん…。」
ようやく泣き止んだ男をオレは組み伏せていた。
この腕に取り戻した男を抱きたくて。
オレの愛撫に男は声を抑えている。

「声…我慢すんなよ。」
聞きたくて乞うてみる。
「センセイが…後でいじめるからな。」
ワザと呼び方を変えてやがるな。
「根に持つなよ。嬉しかったんだから。
 オレに声を聞かせろ。…ロイ。」
同時に男のものを弄ったオレに
「…ぁ!エドワード…」
ようやく甘やかな声が聞こえた。

長い時間を掛けて感じさせた。
男がオレのものをねだっても尚。
もう限界だとオレに懇願するまで。

同じく長く掛けて解した後孔にオレの熱をあてる。
「ロイ、オレを…エドワードを受け容れられるな?」
最早恒例と化した言葉を掛ける。
その意味は解らなかったけど。
「ん…。」
呼吸が変わったのを確認してオレを差し挿れていく。

「ぅ…っ!ぁ…っ。」
まだ苦痛に満ちた声があがる。
こればかりは幾ら慣れても避けようがない。
こいつを欲しさにいつもより早く捻り込んでしまった。

「ぅ…ぐ!…ぅ」
また指をきつく噛んでいる。
「指を噛むなって言ってるだろ?」
そうだ。
いつからこんなクセがついたんだ?
やはりオレはこいつのこんな仕種を見た覚えがなかった。

「なあ?」
「…ん?」
指を口から離させた。
「指、いつからそんなクセがついたんだ?」
「え…?」
無意識だったのだろうか。
しばらくぼんやりと自分の歯形の付いてしまった指を見つめている。

びくッ!
いきなり男の躰が揺れた。
「な…?どうした?」
なんか驚きでもしたのか?
「あ…いや、君のがイイトコロにあたっていたのでな。
 つい感じてしまった。」
唇の両端を引き上げ、婉然と微笑む。
「〜〜!!」
その顔には弱い。
どうにも煽られる。

「エドワード…。
 もっと奥まで欲しい…。」
自分から誘うように腰を揺らしてくる。
たまらん!
「幾らでも欲しいだけやるよ。」
オレはいつもより激しく突き上げた。


それからの日々はとても穏やかだった。
不安定に陥った原因の焔を克服したんだ。
これで精神が大分落ち着いたのかも知れない。
薬の規定量まで徐々に減らすことができた。
幸福そうに過ごす男を見ていて、オレも幸福だった。
このまま男を幸福にしていかれるのだとオレは信じていた。

オレは忘れていたんだ。
大佐がどれだけ策謀に長けている人間だったかということを。





Act.32

clear
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