F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 > 「遊 脇道」(エドロイVer.) > 「遊 脇道」Act.35
「遊 脇道」Act.35
08.12.26up
「ごちそうさま!」
「…お粗末様。」
勢い良くフォークを置いて皿をキッチンへ運ぶ男にオレは溜め息をついた。
ホントにコドモかっつぅの!?
そんなに雪を見るのが楽しみなのか、朝メシを気もそぞろにがっついていた。

「さあ!エドワード!」
「あー、はいはい。
 靴下をもっと厚手のにしろ。
 セーターも上から着て。
 それから私服用のマフラーとコートもな。」
言葉を受けてぱたぱたと寝室へ走っていく。
オレは半ば呆れて見送った。

オレに言われた通り、もこもこに服を着た男に
「そんなに雪を見るのが好きなのか?」
オレも上着を着ながら聞く。
「そうではない。
 エドワードと一緒に見るのが楽しみなんだ!
 ずっと一緒に見たいと思っていた。」
ホントに嬉しそうに言う。

「外に出るのか?」
聞くとベランダから見たいと言う。
「遠くまで雪に覆われているのが見通せるからな。」
心底雪が好きらしい。

ベランダの手すりにまで雪が積もっている。
セントラルでこんなに雪が降るのはめずらしい方だ。
白い息を吐きながらオレを抱き寄せ、真っ白に染まった街を見下ろす。
「綺麗だな。」
「ああ。綺麗だ。」
また死ぬときにはこの光景が脳裏に浮かぶといいとか思っているんだろうか。

「そんなに雪が好きなら、旅行は北方にしようか?」
カウロイ湖にはあまりいい記憶がないことを思い出してしまったしな。
「それもいいな。
 北方司令部に…。」
そこまで言って言葉を切る。

「あ?あんた北方司令部に行ったことがあるのか?」
しばらくしてから答えが返ってきた。
「ああ。視察…将軍の代理で行ったことがある。
 ブリッグズ山に本当に我が国は護られているのだと実感した覚えがあるな。」
「へえ。北方ってなにか観光出来るところがあるのか?」
オレの言葉に少し考えてから
「あまり…どこへも行かなかったから解らないな。
 …すぐに…セントラルに戻ってしまったから。」
楽しい思い出ではないらしい。
当時はドラクマときな臭かったからな。
遊びでなく軍務で行きゃ、そりゃ楽しくなかっただろう。

「ふぅん。
 で、どうする?旅行の行く先さ。」
「ああ…。やはり北方にしようか。
 もう300年以上経っているんだ。
 観光施設も有るだろう。
 エドワードはスキーは出来るのか?」
「あー?まあパラレルくらいならな。」
ガキの頃から冬休みと春休みには合宿制のスキースクールにアルと2人で突っ込まれていた。
もちろんその間親は家でいちゃいちゃしてやがった。

「では3月下旬なら雪も残っているだろうし、ノースシティの北側…ブリッグズ山の麓あたりに宿を取ろう。」
「ああ。」
早速ネットで調べてみよう。
オレも楽しみだ。

「ああ。エドワードと一緒に雪が見られて本当に嬉しいよ。」
抱きしめる腕に力が込められる。
「ここに君が居る。
 実体を持って存在してくれている。」
オレと向かい合わせになるように躰の向きを変えキスしてくる。

お?
あのさ、こんな雪の日に人んちのベランダ見上げるヤツも少ないかも知んないけどさ、オレ達から街が見下ろせんなら街からオレ達が見える訳で…。
でもこいつがしたいようにさせればいい。
オレも男の躰に腕を廻してキスに応えた。
ベランダにまで吹き込んでくる雪がオレ達にも降り積もる。

ふと、オレは以前の自分が雪を嫌いだったことを思い出した。
機械鎧の手足は雪が落ちても溶けることはなく、結晶がそのまま残って。
その冷たさはオレの躰を、神経を苛んだから。
それは自分が犯した罪を改めて実感させて。
でもそのことを男に告げる気はもちろんない。
それにこれからは雪が好きになるだろう。
男がこんなにも好きなものなんだから。
そして今、オレには雪が触れれば溶ける暖かい手足があるのだから。

出勤間際まで2人で雪を見ていた。
濡れてしまった髪をドライヤーで乾かし、着替えをして事務所へ向かう。
セントラルの人間は雪に慣れていないので、少しの雪でも怪我人が多く出てニュースになる。
特に大人は滑ったり転んだりするモンだが、男は器用に雪の上を歩く。
オレも大概雪慣れしているが、こいつも相当だ。
雪が好きと言うだけはある。

「あんたもガキの頃から雪山に行ってたのか?」
オレの疑問に
「いや?高校に行ってからだな。スキーを始めたのは。」
不思議そうな顔で応える。
「へえ?それにしちゃ雪慣れしてるな。
 オレは小学校に行くかどうかって頃から毎年行ってたんだけどさ。
 普通はもっと歩くのに手間取るモンだけど、やっぱあんたは運動神経がいいからかな。」
感心したオレの言葉に
「お誉めに預かり重畳でございます。」
男は雪の上で危なげなく、貴族のように優雅な一礼をした。


「ジャカジャン!
 第2弾でぇっす!!」
どうしてお前がそんなに嬉しそうなんだよ?アル?
昼メシ時、男とオレに『遊 vol.2』を一冊ずつ渡す。
「おー。結構分厚いな。」
オレは相変わらずぱらぱらと捲っていたが、男は楽しそうに読み始めた。

「おや、温泉旅行に出掛けている。
 羨ましいことだな。
 東の島国について良く調べて有るようだ。」
温泉旅行か。
それもいいな。
「ならブリッグズ周辺の温泉を探すか?」
「ああ、それはいいな。
 雪で冷えた躰をのんびり温泉で温めて。」
「冷えたビールを飲んだら最高だな。」

「なになに?旅行でも行くの?」
アルが話題に乗ってきた。
「ああ。確定申告が終わったらちょっとのんびりしようかと思ってな。」
「3月にブリッグズ山って。そんな寒いトコよりもっとあったかいところにすればいいのに。」
まあ、最初はオレもそう思ったんだけどな。
「こいつ、雪が好きなんだよ。
 だから北方にしようと思ってさ。」
「へえ。意外ですね。
 猫属性の人は寒いのが嫌いかと思ってましたよ。」
…猫属性ってナニ?
いや、確かにこいつは猫だけど。

「そういえばウィンリィ達が今度猫耳を付けて欲しいと言ってましたよ?
 是非スケッチをさせて欲しいそうです。」
猫耳?
「それは…どんなものなのかな?」
男にも解らないようだ。
「ああ、カチューシャに猫の耳が付いているようなモノですよ。
 番外編で『ますにゃんぐ』モノが描きたいとシェスカが言い出しましてね。
 なにやら『王道なのよ!』と息巻いてました。」
ね…猫の耳を付けたこいつ…?
…ますにゃんぐ?
シッポとかも付けたりするのか!?
ヤヴァイ!
鼻血出そう…。

「そんなくっだらないモン、誰が付けさせるかよ!
 あいつら大の大人をなんだと思ってるんだ?
 こいつの地位を考えてみろっての!」
ダメだ!
他人には絶対見せたくない!
でもオレはちょっと見たい。
かなり見たいかも!

「兄さん、顔が紅いよ?」
冷静なキミをボクは常に尊敬してるよ?
でも今はやめて欲しいなぁ。
「あんまり非常識なこと聞いたら驚いたんだよ!
 ちっさな子供に付けたらかわいいかも知んないけどな?」
「ふぅん。」
あ、その冷めた瞳はやめてくれないかな?
兄ちゃんは哀しいよ?

「エドワードの希望が通ったようだな。」
読み進めていた男が言う。
助かった。話題が変わって。
「あ?なにが?」
「ほら。私が無理強いをしなくなっている。
 随分優しくなったようだ。」
ざっと読んでみるが
「ああ?オレの情けなさが倍増してんじゃねぇか。
 ナニ逃げてんだよ!オレ!」
こいつはどんなにつらくても抱かれることを求めてくれたのに。
根性足りてねぇよ。

「まあ、そういうものかも知れないよ。
 仲々リアルなのではないかね?」
オレにとってリアルは目の前の男だけだ。
しかし読んでみると
「…エロばっかだな。
 背中の地図ぅ!?
 こっ恥ずかし〜!
 他人が隣にいるところで?
 うひゃ〜。エッチぃ!」
よく恥ずかしげもなくこんなモン書けるな。(←すみませんね!)

「ふむ。このくらいエドワードが積極的だと嬉しいかも知れないな。」
「おや。兄さんはそんなに淡泊ですか?
 ロイさんにはご不満が?」
アル!オレは普通だよ!
こいつらの書くのがエロ過ぎんの!

「いや、もちろん愛するエドワードに不満などないが。
 しかし作中の私の積極さがちょっと羨ましいかな。
 このワザとエトヴァルトが自分から求めるようにする為の策略もそそるものがある。
 いきなり今まで自分から求めていたのをすっぱりやめるとは、仲々だな。」
「あんた昼間っからこんなことされたいのか?
 恥ずかしくねぇか?」
オレは恥ずかしいよ。

「エドワードは優しいから、もし私が少しでも厭だと言ったらやめるだろう?」
「そりゃ、あんたの厭がることはしたくない。
 当たり前だろ?」
「たまには厭と言っても強引に求められるのも燃えるな。」
にやり、と楽しそうに笑ってやがる。
からかってんな?
「ほお。解った。
 これからはあんたが泣いて厭がっても止めないようにするぜ。
 それがいいんだな?」

「兄さん、同人誌よりエロい事言ってるの、気が付いてる?
 というか、そのセリフそのまま使われてもいい?」
「いい?って、お前がウィンリィ達に言わなきゃいいだけだろ?」
「ボクは包み隠さず兄さん達の会話を教えるように言われてるからね。」
しれっと恐ろしいことを言うな!

「おま、そんなにウィンリィの言いなりなヤツだったか!?」
男とアルが視線を合わせてまたにやりと笑う。
ナニ!?
「ウィンリィだけならそうでもないんだけどね。」
にやにやと笑いながらアルが言う。
「あ?シェスカか?母さんか?」
誰に命令されてんだよ?

「母さんにも逆らえないけどさ。
 実はホークアイさんに言われてるんだ。
 ね?兄さんでも反対できないでしょ?」
「うっ!」
ホークアイさん?
つか、中尉に逆らう?
…絶対無理。
男でさえもそれは無理だろう。

「なんでホークアイさんがオレ達の会話をお前にスパイさせるんだよ?」
オレはがっくり肩を落とした。
「んー?
 ウィンリィ達の同名を使ってもいいかってお願いをしたときに頼まれたんだ。
 ロイさんはあまり都合の悪いことは言ってくれないから、ボクに色々教えてくれって。
 素敵な大人の女性には敵わないよね。」
いや、あの恐怖心には確かに逆らえねぇけど。
オレは溜め息をついた。

「オレが攻めのセリフを言ったって意味がないだろ?」
「いやぁ。ホークアイさん達の同人誌は兄さんが攻めだからね。
 丁度使えるんじゃない?」
何でもないことのように言うな!
あー、でも中尉か…。
「好きにしろよ…。オレもホークアイさんには逆らえない。」
くすくすと笑う男をオレは軽く睨んだ。

「仲々ウィンリィ嬢達の作品も盛り上がっているようだね。
 この最後の部分、なにか事件が起きそうだ。」
最後まで読み終わった男が言う。
「そうなんですよ。
 一つ事件で盛り上がりたいんですが、その解決方法にも凝りたいって言ってるんです。
 なにかいいアイディアは有りませんか?」
事件の全容とその解決方法についてアルと男は話し合っていた。
オレはそんな腹黒い作戦は思いつかないよ。
蚊帳の外でぼんやり会話を聞いていた。


3月1日に全てのお客さんの申告が終わった。
今年は余裕だったな。
既にブリッグズ山麓の宿の手配は付いていた。
温泉で朱に染まった男の躰はきっと艶っぽくてオレを誘うだろう。
オレはウィンリィ達の同人誌を真似て、そのまま押し倒せるよう部屋付きの露天風呂のある宿を予約した。

いくつかのお客さんは、納付税額分の小切手をオレ達に渡し、納付するまでを依頼してくる。
オレはその小切手を持っていつもの銀行に向かった。
窓口ではあの黒髪メガネの娘が受付をしてくれた。

「あの…。」
こそっとオレに話しかけてくる。
「はい?」
小切手と税金納付票を渡しながら聞く。
「エルリック様と恋人の方、どちらが『攻め』なんですか?」
ああ、ここにも腐女子がいたんだっけな。
「オレが『攻め』です。」
にっこり笑って窓口を後にする。

オレは待合いのソファに座り、その場で署長室直通へ電話をした。
「はい。署長室です。」
「エルリックです。」
「ああ。エルリック先生。今無能に替わります。」
「いえ。ホークアイさんにお聞きしたいことが。
 ウィンリィ以外のサークルさんが公務員シリーズの主人公達の名前を使ってもいいかと思いまして。」
「ああ。それならどうぞお使い下さい。」
「有り難うございます。
 それでは。」
「はい。失礼致します。」
通話を切った。

しばらく後、メガネの娘に
「エルリック様」
処理が終わって窓口に呼ばれる。
彼女に礼を言った後に
「『実録 公務員シリーズ』をご存じですか?」
と聞くと瞳を輝かせて
「ええ!もちろん!
 あの作品で私は目覚めたんです!」
そんなん目を覚まさなくてもいいのに。
「そうですか。あの作者が主人公達の名前を使ってもいいと言ってますので、宜しければお使い下さい。」
「ええ!?いいんですか!?
 あの伝説のサークルさんがそんな許可を!?」
「ええ。どうぞお使い下さいと言ってました。
 くれぐれもオレが『攻め』ですから、そこは宜しく。」
殊更にっこりと笑って見せた。
ウィンリィ、お前少数派になれ。
そんな空しい願いを胸に抱いて。


そして数日後、オレ達はブリッグズ山の麓の宿にいた。
昼間はスキーや雪遊びを楽しみ、夜は温泉に浸かりのんびりと過ごした。
存外に男はスキーよりも雪遊びで楽しげな顔を見せた。
それでも時折、急に不安そうな顔をしてオレを抱き締めては
「きちんと…いるよな?」
と何か確認をしてくる。
その度にオレは男を抱き締め返し
「オレはここにいるよ。」
と頭を撫でた。
するとようやく安心したように、また雪と戯れるのだった。

2晩目にオレはかねてからの心配事を、男が特に上機嫌な時を狙って話し出した。
「あのな?あんた、薬を隠しているだろう?」
オレの言葉にしばらく男は黙っていた。
「ドクターから聞いたのか。」
それは疑問ではなかった。

「ああ。オレはヤツの医院の薬袋をあんたのところで見なかった。
 …また…規定量を超えて多用しているのか?」
「…いや。そうではない。」
このことでまた取り乱されたら困るな。
「責めたい訳じゃないんだ。
 それは解ってくれ。
 オレはあんたの躰が心配なだけなんだよ。」

「だから…多用はしていない。
 規定量を普段は飲んでいる。
 …たまに不安定になってしまったときに一度多く飲むだけだ。
 エドワードの知っている範囲で。」
そうか。
オレは肩から力が抜けた。

「そか…。
 疑って悪かった。」
男を抱き寄せ、その頭を撫でる。
「ルジョンとこの薬袋を見かけなかったから、心配になっちまったんだ。
 …ごめんな。」
男はオレの言葉に少しつらそうな顔をした。

「私こそすまなかった。
 心配を掛けてしまったな。
 沢山の薬局の袋があったら却って心配を掛けてしまうかと思って他の場所に保管していたんだ。
 安心してくれたまえ。
 私はもう薬を多用してはいない。」
「ん。良かったよ。」

告げるオレの顔を見上げて男が言う。
「私が薬をやめたら、君はもっと安心できるか?」
それは…どうだろう。
確かに薬を飲まなくても安定していてくれればそれ以上のことはない。
しかし無理に薬をやめて不安定になってつらい思いをさせるくらいなら、規定量を飲んでいる方がいいのかも知れない。

オレはそれを正直に伝えることにした。
「あのさ、あんたが薬をやめても不安定にならないんなら、やめて欲しい。
 どうも躰に負担を掛けるようだから。
 でもな、無理にやめてまた取り乱すくらいなら規定量を飲む方がいいかとも思う。
 …それはあんたの判断に任せるよ。」

やや経ってから男が口を開いた。
「もう…薬を規定量より減らしても副作用はないだろう。
 これからはもっと飲む量を減らすように努力をしてみよう。
 君が側にいてくれるなら、それは叶いそうな気がする。」
オレが一緒にいることでこいつの精神が安定してくれたら、そんな嬉しいことはない。

「オレ、ずっとあんたと一緒にいて、あんたの傷を癒して支えて行きたいと思ってるからさ。
 じゃあ、無理のない範囲で薬を飲むのをやめような?」
オレの言葉にこくり、と頷く男が心底愛おしい。

オレはその晩、じっくりと時間を掛けて男を愛した。
戯れ言のように以前男が言った言葉をなぞるように、男が泣いても懇願しても手を唇を舌を、オレ自身を休めなかった。
男の声が嗄れるほど。
愛し続けた。
翌日遅くまで男が目覚めることが出来なかったくらいに。
深く、強く。
ただ愛し続けた。





ウィンリィ達の『遊 vol.2』には、こちらの『遊』のvol.14〜vol.30が載っているということで一つお願い致します。
スノボじゃなくてスキーなのは私がスキースクール育ちだからですdeath!



Act.36

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