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リセット
Penitente
F.A.SS
-
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】
-
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために
- (まだロイの片想い)08.06.25up
贈
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月
- (告白)08.6.29up
Turn R
Act.1
Act.2
Act.3
Turn E
Act.1
Act.2
Act.3
どうしようもなく不器用な男
- 08.6.29up
寂
- 08.6.30up
触
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
蝕
- (初体験)08.7.11up
Act.1
Act.2
蹟(しるし)
- (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー
- (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
温
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク
- (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取
- (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Act.1
Act.2
Turn E
Act.1
Act.2
Act.3
幕間
- (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
彩
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
虚
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
慈
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
明
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
嫉
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
嫉 Act.1
嫉 Act.2
嫉 Act.3
【遊 シリーズ】
-
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。
このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。
「遊」vol.1〜vol.9
- 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1
- 08.11.12up
「遊」vol.2
- 08.11.12up
「遊」vol.3
- 08.11.13up
「遊」vol.4
- 08.11.13up
「遊」vol.5
- 08.11.13up
「遊」vol.6
- 08.11.16up
「遊」vol.7
- 08.11.16up
「遊」vol.8
- 08.11.16up
「遊」vol.9
- 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.)
-
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。
「遊」vol.10
- 08.11.19up
「遊」vol.11
- 08.11.19up
「遊」vol.12
- 08.11.19up
「遊」vol.13
- 08.11.19up
「遊」vol.14
- 08.12.7up
「遊」vol.15
- 08.12.7up
「遊」vol.16
- 08.12.7up
「遊」vol.17
- 08.12.7up
「遊」vol.18
- 08.12.7up
「遊」vol.19
- 08.12.7up
「遊」vol.20
- 08.12.7up
「遊」vol.21
- 08.12.12up
「遊」vol.22
- 08.12.12up
「遊」vol.23
- 08.12.12up
「遊」vol.24
- 08.12.12up
「遊」vol.25
- 08.12.12up
「遊」vol.26
- 08.12.12up
「遊」vol.27
- 08.12.12up
「遊」vol.28
- 08.12.12up
「遊」vol.29
- 08.12.12up
「遊」vol.30
- 08.12.12up
「遊」vol.31
- 08.12.16up
「遊」vol.32
- 08.12.16up
「遊」vol.33
- 08.12.16up
「遊」vol.34
- 08.12.16up
「遊」vol.35
- 08.12.17up
「遊」vol.36
- 08.12.17up
「遊」vol.37
- 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です)
- 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ)
- 08.12.17up
- (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ)
- 08.12.17up
- (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.)
- 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1
- 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35
- 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36
- 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37
- 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます)
- 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話)
- 08.12.26up
- (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (駅前相談するセンセイ)
「擦」 (「遊」番外編? エドロイ?←聞いてどうする。)
- 09.1.7up
- (新婚さんイベント♪)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも)
- 09.1.7up
- (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編)
- 09.1.7up
- (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 16.12.29up
- (あの夜の男は)
「射」(「遊 脇道」番外編)
- 17.1.19up
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ)
- 09.1.7up
- (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ)
- 09.1.7up
- (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発)
- 09.1.7up
- (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?)
- 09.1.7up
- (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
↑
- 上下につながりはありません
↓
「紅」 (エドロイ)
- 09.1.7up
- (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】
- (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1
- 09.1.7up
「赦」 Act.2
- 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」
- 14.10.16.up
- (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」
- 09.1.7up
- (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」
- 09.1.7up
- (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」
- 09.1.7up
- (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】
- ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1
- 09.1.7up
「錯」 Act.2
- 09.1.7up
「錯」 Act.3
- 09.1.11up
「錯」 Act.4
- 09.1.11up
「錯」 Act.5
- 09.1.12up
「錯」 Act.6
- 09.1.16up
「錯」 Act.7
- 09.1.16up
「錯」 Act.8
- 09.1.17up
「錯」 Act.9
- 09.1.17up
「錯」 Act.10
- 09.1.18up
「錯」 Act.11
- 09.1.20up
「錯」 Act.12
- 09.1.21up
「錯」 Act.13
- 09.1.24up
「錯」 Act.14
- 09.1.27up
「錯」 Act.15
- 09.1.29up
「錯」 Act.16
- 09.2.1up
「錯」 Act.17
- 09.2.6up
「錯」 Act.18
- 09.2.12up
「錯」 Act.19
- 09.2.15up
「錯」 Act.20
- 09.2.20up
「錯」 Act.21
- 09.2.26up
「錯」 Act.22
- 09.3.9up
「錯」 Act.23
- 09.3.13up
「錯」 Act.24
- 09.3.20up
「錯」 Act.25
- 09.3.26up
「錯」 Act.26
- 09.4.7up
「錯」 Act.27
- 09.4.21up
「錯」 Act.28
- 09.5.6up
「錯」 Act.29
- 13.5.21up
「錯」 Act.30
- 13.5.22up
「錯」 Act.31
- 13.5.23up
「錯」 Act.32
- 13.5.26up
「錯」 Act.33
- 13.5.31up
「錯」 Act.34
- 13.6.2up
「錯」 Act.35
- 13.6.17up
「錯」 Act.36
- 13.6.19up
「錯」 Act.37
- 13.6.26up
「錯」 Act.38
- 13.7.11up
「錯」 Act.39
- 13.7.14up
「錯」 Act.40
- 13.7.19up
「錯」 Act.41
- 13.7.27up
「錯」 Act.42
- 13.8.13up
「錯」 Act.43
- 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結)
- 13.11.26up
「証」 (『錯』番外編)
- 13.12.28up
「聴」 (『錯』番外編)
- 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1
- 17.1.7up
Vol.2
- 17.1.7up
【瑠】シリーズ
- 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1
- 16.12.30up
「瑠」 Act.2
- 17.1.1up
「瑠」 Act.3
- 17.1.3up
「瑠」 Act.4
- 17.1.11up
Gift
- 頂き物など
取調室にて
-
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more
-
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【遊 シリーズ】 >
「遊 脇道」(エドロイVer.)
> 「遊 脇道」Act.33
「遊 脇道」Act.33
08.12.24up
家に帰ってもう一回戦。
それが終わって男はくったりと眠っている。
オレもさすがに疲れたわ。
事務所でも結構ディープなセックスをしたしな。
眠るまで男はオレの髪を弄んでいた。
まだ髪に絡まる男の右手をそっと外して気が付いた。
人差し指の第二関節がうっすらと紫色になっている。
…昨日はこんな風になっていなかった。
今日、朝メシの皿を渡したときもこんな内出血は無かった。
…さっき事務所で抱いたときか、今ここで抱いたときだよな?
今抱いたのは向かい合っての姿勢だけだ。(正常位ってやつだ。)
その時に指は噛んでいたが、すぐ外させた。
ってことは、これはさっき事務所で抱いたときだな。
でもそんな覚えはない。
…オレに気付かれないように指を噛んでいた?
オレが気が付けばいつもすぐに外させている。
だから今までこんな内出血にまではならなかったんだ。
…そういうことだよな?
裏を返せば、指を噛むことは無意識であったとしても、この心情を容易くは明かさない男がそのことを隠したがっているという訳だ。
それはナニを示すんだ?
大分落ち着いて来たけれど、規定量まで減らせたというだけで安定剤を手放せないって事実は変わらないんだよな。
まあ持病と付き合っていくと考えればいいのかも知れないけど。
焔という原因は一つ減ったんだ。
イシュヴァールのことやヒューズ准将のこと、ウィンリィの両親のことも、少しずつ癒されていけばいい。
もう前の人生のことなんだし。
これからはこの時代に生まれ変わったことに感謝して、将来を一緒に作って行かれればいいな。
少し汗で湿ってしまった髪を撫で、オレも眠ることにした。
翌日の午後遅くに、男から事務所に連絡が入った。
「ん?どした?」
受話器を肩で押さえ、入力を続けながら声を掛ける。
「ああ、今日はちょっと調子が良くないので、申し訳ないが先に帰らせて貰うよ。
センセイは遅くなりそうなのか?」
調子が悪い?
昼は普通だったけどな?
「あー。早くは帰れないな。
どんな具合なんだ?大丈夫なのか?
車で迎えに行って家に送ろうか?」
風邪だろうか?
昨日2回したのがマズかったかな?
「いや、大したことはないんだ。少し横になれば治ると思う。」
「んー?そか?
じゃあ枕元に携帯を置いて、なんかあったらすぐ連絡しろよ?」
「ああ。すまない。
帰ってきたらインターフォンを鳴らしてくれたまえ。」
「あ?いいよ。勝手に入るから寝てろ。」
「たまには私から『おかえり』を言いたいじゃないか。」
「病人はそんなことしないで寝てろ。」
「病人なんて大げさなモノじゃない。だからその程度にしか悪くないと言うことだ。」
「ん。とにかく大人しく寝てろよ?
なんか食べたいモノとか欲しいモンとかないか?」
「特にはない。帰る前に連絡が欲しいな。それまでは寝ているから。」
「ああ。解った。枕元に水と携帯を忘れるなよ。
それとちゃんとあったかい格好して寝るんだぞ?」
「了解した。ではまた後で。」
「ん。気を付けて帰れよ?」
「ああ。センセイも。…待っているから。」
「ん。」
いつものようにオレから切る。
でないと男はいつまでも切ろうとしないから。
「ロイさん具合悪いの?」
会話を聞いていたアルが言う。
「ん。らしいな。大したことはないみたいだけど。」
やはり無理を掛けたんだろうか。
「それにしてもホント子供扱いするよね。」
「あ?ナニが?」
「ロイさんはいい大人なのに。
迎えに行こうかとか、あったかい格好して寝ろとか。
ボクにだってもうそんな風に言わないだろうに。」
あー。そうだな。
「なんかヘンに子供みたいなとこあんだよ。
それでつい、な。」
「ホントにかわいいんだね。ロイさんが。」
「ああ。かわいいし、大切だ。ずっと側にいて幸福にしてやりたいんだ。」
「いいな。ボクもそう言える人を早く見付けたいよ。」
「きっと見付かるさ。焦らなくてもな。」
だから媚薬とか使ってんじゃねぇよ?
「そうだね。焦らず探してみるよ。」
入出力とチェックを繰り返していくうちになんだか男が心配になってきた。
もう7時か。
「なあ、アル。ちょっくらあいつの晩メシ作りに行ってくるわ。
ついでに様子も見てくる。」
申告書のチェックをしていたアルが顔を上げる。
「行ってくるじゃなくて、帰るでしょ?
もう大分申告書も上がってきたし、帰って大丈夫だから。
明日もロイさんの具合が悪いようだったら兄さんも休んで。」
今年はお客さんが減ったせいもあるが、仕事の進みが割と早い。
「んー。悪いけどそうさせて貰うかな。
こっちはキリがついてるから。あとは次のお客さんの申告書からな。」
「ん。それはこっちでやっとくからいいよ。
ロイさんに宜しくね。お大事に。」
「ん。サンキュ。じゃ、あと頼むな。」
寝ているだろうからメールで「これから帰る」とだけ送り、帰りにコンビニで林檎のヨーグルトとスポーツドリンクを買って帰った。
玄関を静かに開けてキッチンに向かうと、リビングに灯りがついている。
「まったくいつもちゃんと消せって言ってんのに。」
お坊ちゃんな男に『省エネ』という文字はない。
家中の灯りを平気で付けっぱなしにするんだ。
その度にオレが消して回っている。
買った物を冷蔵庫にしまうとリビングに向かった。
「! ナニしてんだ!?」
コートも脱がず、寒いリビングのソファに男が躰を丸めて転がっている。
「あ…センセイ。帰ったのか?」
横たわっていた躰をおこす。
「あったかくしてベッドで寝てろっつったろ?
こんな寒いトコでナニしてんだよ!」
顔色が悪い。
寒さのせいか躰も震えている。
「あんた顔色悪いぞ?具合はどうなんだ?」
「ああ。寒いな。
風邪のせいか貧血を起こしたようだ。
…動きたくなくてここで横になっていたんだ。」
胸元で握っている拳までが震えている。
風呂で暖まった方が…って、風邪のときはマズいか。
とりあえずリビングと寝室のヒーターを入れた。
「腹へったろ?なんか消化のいいモン作ってやるからな。
ここで横になってるか?
今布団持ってくる。」
すると男は
「いや、ベッドで寝ているよ。
食事が出来たら起こしてくれたまえ。」
ふらりと立ち上がる。
は!?
こいつが料理するオレから離れて独りでベッドに!?
ベッドに行けっつったっていつもはキッチンが見えるソファに居たがるのに?
…そんなに具合が悪いんだろうか?
なにか釈然としないモノを感じたが、具合が悪いんなら確かにソファなんかよりベッドで寝た方がいい。
「ああ。水をくれないか?
枕元に置いておく。」
「お…おお。スポーツドリンク買ってきたから。」
オレはキッチンからスポーツドリンクを持ってきて渡した。
「携帯も置いとけよ?」
「ああ。」
そのまま何も言わず寝室へ消えていった。
どうしたんだろう。
寒かったから風邪をひいたんだろうか。
それにしても風邪をひいたんなら、こんな寒いところで転がってることもないだろうに。
貧血を起こしたって言ってたけど大丈夫かな。
オレはキッチンへ行き、オートミールの粥を作ることにした。
消化が多少悪くても男は肉が入っていないと文句を言うだろう。
薄切り肉しかなかったので、包丁で叩いて挽肉を作り野菜も合わせて粥を煮ていた。
弱火にして掻き混ぜていると電話が鳴った。
男を起こさないよう、コンロのスイッチを切って慌てて出た。
「はい。マスタングです。」
「ああ、先生。良かったわ。もう家に帰っていたのね。」
ホークアイさんだ。
「どうしたんですか?」
「…署長はそこにいらっしゃるのかしら?」
「いや、今眠っていますが急用ですか?」
起こさなきゃならないかな?
「いいえ。違うの。
…エルリック先生に話しておいた方がいいかと思って。
署長、具合が悪そうでしょ?」
「ええ。風邪から貧血を起こしたと言っているんですが。
何かあったんですか?」
「あのね。今日、仕事で一緒に出掛けたのだけれど、そこでケンカをしている人達を見たのよ。」
「はあ。」
「その内の一人が殴られて血だらけで電話ボックスに突っ込んだのを見たときに、いきなり署長が叫び声を上げたの。
真っ青な顔して。」
電話ボックス…。
血だらけで…。
ヒューズ准将!
「それは…ヒューズと叫んだんですか?」
「先生もご存じなの?」
「なんとなく…そう思ったんです。
そうなんですね?」
「ええ。いきなり『ヒューズ』と叫んで走り寄ろうとしたの。
あまり柄の良い連中でも無かったから引き留めたら
『ヒューズが死んでしまう。』と暴れたのよ。
私もご友人のヒューズ氏は存じ上げているけれど、倒れた人は似ても似つかない人だったわ。
でも署長は『ヒューズ!ヒューズ!今なら助かるかも知れない。』と…。」
「取り乱したんですね。
…それで?」
「私が『あの人はヒューズさんではありません。』
と言うと
『中尉。あれはヒューズだ。
どうしてみんな私を置き去りにしていくんだ。』
ってそれは哀しそうな声で…泣き出すかと思ったわ。
『チュウイ』って何か解らなかったけれど
『あの人はヒューズさんではありません。』
ともう一度言ったらしばらく黙って、そのうちにいつもの顔に戻ったの。
『すまなかった。なにか勘違いしたようだ。』とまた歩き出したんだけれど、顔色が悪くて震えているようだった。」
「そう…でしたか。」
「ええ。気になったものだからエルリック先生にお伝えしておいた方がいいかと思って。
先程事務所にお電話したのだけれどもう帰られたとアルフォンス君に言われたのでこちらに連絡したの。
署長の具合はいかがかしら?」
「ええ。顔色が悪いです。
ここにオレが帰ってきたときは寒い部屋に転がっていて、震えているのはそのせいかと思っていたんですが違ったようですね。」
そして取り乱したことをオレに隠すために先に家に帰り、そして今ベッドに独りで行った訳だ。
「署長を…宜しくお願いね。
署長は先生しか見ていない。
あなたしかあの人を支えることは出来ないのよ。
それを先生が望まないのなら、お願いすることは叶わないけれど。」
普段『無能』と呼んでいようと、同人誌のホモネタに使おうと、やはり中尉は中尉のままだ。
男を大切に思って護ろうとしている。
それは理屈ではなく、何度生まれ変わっても変わらない魂の記憶なのかも知れない。
「はい。大丈夫です。
オレはあいつを愛してます。
側にいて、ずっと支えていきたいと思っています。」
ふ、と力の抜けた様子が受話器を通して伝わってきた。
「本当に手の掛かる無能で申し訳ないけれど。
先生。どうか宜しくお願いします。」
「はい。オレはあいつの笑顔を護るためなら、出来ることは何でもします。
ホークアイさんもあいつをお願いします。
職場ではどうしようもないヤツでしょうが、支えてやって下さい。」
オレの言葉に笑う声が聞こえた。
「無能がどうしようもないのには慣れてますから。
私も出来る限りのことはするつもりです。
また何かありましたらご連絡します。」
「お願いします。」
挨拶をして電話を切った。
オレはソファに崩れるように座った。
今まではオレの前で不安定なところも取り乱すところも見せていた。
なぜここに来て、今更それを隠そうとするんだ?
…今までにもこういうコトが有ったんだろうか。
取り乱したことをオレに隠していることが。
隠して何になるって言うんだ?
オレは男の壊れた精神ごと、抱きしめて支えていきたいと思っているのに。
しばらく考えていたが、そう簡単に結論の出るコトじゃない。
オレは立ち上がってコンロのスイッチを入れて粥を仕上げた。
最後に卵を落として完成だ。
付け合わせにはザウアークラウトを添えた。
後は林檎ヨーグルトを食わせればいいだろう。
粥にはオートミールよりも多く野菜を入れてある。
ベッドへ持って行こうか、ここへ連れてこようか悩んだ。
ホークアイさんの言う通りなら風邪ではないから、ここへ来させても大丈夫だろう。
しかし男が風邪と言い張るのならそれに合わせた方がいいのかも知れない。
「…とりあえず面を拝むか。」
そっと寝室に入った。
男はさっきと同じように躰を丸めてベッドに横たわっている。
そう言えばオレに抱きついて眠るときも躰を丸めがちにして脚を絡めてきているな。
額をオレの肩口にくっつけて。
そうか。
それでどこか傷ついているような印象を受けていたんだ。
ナニかから身を護るような、胸に傷を抱えているようなその姿勢が。
それは大佐がすることの無かった姿勢だった。
大佐はいつも仰向けでオレに腕枕をするか、横向きの時もオレを抱いてほぼ真っ直ぐな姿勢で眠っていた。
脚を絡めるときも有ったが、それは膝下を絡め合うくらいだった。
どうしてこんなに変わってしまったんだろう。
いつからこうなってしまったんだろう。
無言で立ちつくすオレの気配に気付いたのか、男が目蓋をあげた。
「…エドワード?」
「あ…。ああ。起きたか。メシが出来たぞ?
ここに運ぼうか?それとも起きてくるか?」
んー、と伸びをしている。
顔色は良くなったようだ。
躰も震えていない。
さっき薬を飲んだんだろう。
決められた時間外だが。
「ああ。もう良くなったようだ。ダイニングで食べよう。」
起きあがって服を着始める。
「ガウンも羽織れよ?
食事はリビングでしよう。あっちの方が暖かい。」
ダイニングキッチンにも床暖房が入っているが、テーブルに座るよりはリビングの床暖房に直接座った方が暖かいだろう。
「めずらしいな。君が床に座って食べることを赦してくれるなんて。」
男は楽しそうに言う。
その嬉しげな顔の下にナニを隠しているんだよ。
オレは少しやりきれない気持ちで寝室を後にした。
ワザと病人を装う男にスプーンで粥を食べさせる。
嬉しげに『あーん』と口を開いている姿は全くいつもの通りで。
むしろオレをからかっていた大佐そのものだった。
…ちょっと大佐にしては甘え過ぎかも知れないが。
こいつはオレだけが全てと言いながら、どれだけのモノをオレに隠しているんだろう。
ふと思い出したことを口にした。
「なあ。国銀とあんたって、どんな関係があるんだ?」
ザウアークラウトを咀嚼していた男の口が一瞬止まる。
「忘れてくれなかったか。」
飲み下して苦笑している。
「あ?都合が悪いのか?
なら聞かないけど?」
別に無理に聞こうとは思わない。
「いや、都合が悪い訳ではない。
ただ…面倒だったのでな。」
面倒?ナニが?
「私が金相場から発展して、経済に興味を示したのも父の与えた課題だったと言っただろう?」
ああ。そんなことを言ってたな。
「で?」
「父は祖父と自分の後を継がせたかったのだろう。
税務署に勤めるときも『税金の流れを知ることも良かろう』と賛成していた。
…私の思惑も知らずにな。」
「あんたの思惑って、オレを探すことだよな?」
「ああ。そうだ。
しかし父はやがては私を国銀に入れ、自分の後を任せたかったらしい。
もう父は亡くなっているが。」
後を任せるって?
「あんたと国銀ってどういう関係?」
ん?とオレの顔を見つめる。
「私の父方の祖父は国銀副総裁だ。
そして現在の総裁のグラマン氏はホークアイ君の祖父であられる。」
ほおお。
って、えええええ!!!?
国銀総裁の孫娘と副総裁の孫!?
アメストリス大戦以後の疲弊したこの国を経済大国にまで押し上げたカミサマのような『経済の立役者』と言われる両者がこいつらのジイサン!?
「わああ。ボク、サイン欲しいなぁ。」
棒読みになってしまったが、実は本音だ。
「君が欲しいのなら、祖父とグラマン氏のサインを貰ってくるが?」
「いや。冗談だ。」
や、ホントはちょっとマジで欲しいかも。
有っても仕方のないモノとは解っていても、欲しいモノってあるよな。
その日はあくまでも自分の取り乱したことを吐露しようとしない男に合わせてオレもナニも聞かなかった。
ただ、強請られるままに男を抱いて、眠りに落ちかける男に
「なあ。オレはホントに子供であんたを支えられないかも知んない。
でもさ。
オレはあんたを好きで、一緒にあんたの傷を支えたいと思ってるんだよ。」
とそっと囁いた。
男がその言葉を受け止めたかどうかは解らない。
そしてオレは明日、ルジョンにまた相談しようと思っていた。
Act.34
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