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リセット
Penitente
F.A.SS
-
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】
-
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために
- (まだロイの片想い)08.06.25up
贈
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月
- (告白)08.6.29up
Turn R
Act.1
Act.2
Act.3
Turn E
Act.1
Act.2
Act.3
どうしようもなく不器用な男
- 08.6.29up
寂
- 08.6.30up
触
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
蝕
- (初体験)08.7.11up
Act.1
Act.2
蹟(しるし)
- (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー
- (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
温
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク
- (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取
- (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Act.1
Act.2
Turn E
Act.1
Act.2
Act.3
幕間
- (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
彩
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
虚
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
慈
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
明
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
嫉
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
嫉 Act.1
嫉 Act.2
嫉 Act.3
【遊 シリーズ】
-
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。
このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。
「遊」vol.1〜vol.9
- 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1
- 08.11.12up
「遊」vol.2
- 08.11.12up
「遊」vol.3
- 08.11.13up
「遊」vol.4
- 08.11.13up
「遊」vol.5
- 08.11.13up
「遊」vol.6
- 08.11.16up
「遊」vol.7
- 08.11.16up
「遊」vol.8
- 08.11.16up
「遊」vol.9
- 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.)
-
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。
「遊」vol.10
- 08.11.19up
「遊」vol.11
- 08.11.19up
「遊」vol.12
- 08.11.19up
「遊」vol.13
- 08.11.19up
「遊」vol.14
- 08.12.7up
「遊」vol.15
- 08.12.7up
「遊」vol.16
- 08.12.7up
「遊」vol.17
- 08.12.7up
「遊」vol.18
- 08.12.7up
「遊」vol.19
- 08.12.7up
「遊」vol.20
- 08.12.7up
「遊」vol.21
- 08.12.12up
「遊」vol.22
- 08.12.12up
「遊」vol.23
- 08.12.12up
「遊」vol.24
- 08.12.12up
「遊」vol.25
- 08.12.12up
「遊」vol.26
- 08.12.12up
「遊」vol.27
- 08.12.12up
「遊」vol.28
- 08.12.12up
「遊」vol.29
- 08.12.12up
「遊」vol.30
- 08.12.12up
「遊」vol.31
- 08.12.16up
「遊」vol.32
- 08.12.16up
「遊」vol.33
- 08.12.16up
「遊」vol.34
- 08.12.16up
「遊」vol.35
- 08.12.17up
「遊」vol.36
- 08.12.17up
「遊」vol.37
- 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です)
- 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ)
- 08.12.17up
- (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ)
- 08.12.17up
- (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.)
- 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1
- 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6
- 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15
- 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25
- 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34
- 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35
- 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36
- 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37
- 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます)
- 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話)
- 08.12.26up
- (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (駅前相談するセンセイ)
「擦」 (「遊」番外編? エドロイ?←聞いてどうする。)
- 09.1.7up
- (新婚さんイベント♪)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも)
- 09.1.7up
- (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編)
- 09.1.7up
- (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 09.1.7up
- (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ)
- 16.12.29up
- (あの夜の男は)
「射」(「遊 脇道」番外編)
- 17.1.19up
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ)
- 09.1.7up
- (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ)
- 09.1.7up
- (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発)
- 09.1.7up
- (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?)
- 09.1.7up
- (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
↑
- 上下につながりはありません
↓
「紅」 (エドロイ)
- 09.1.7up
- (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】
- (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1
- 09.1.7up
「赦」 Act.2
- 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」
- 14.10.16.up
- (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」
- 09.1.7up
- (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」
- 09.1.7up
- (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」
- 09.1.7up
- (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】
- ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1
- 09.1.7up
「錯」 Act.2
- 09.1.7up
「錯」 Act.3
- 09.1.11up
「錯」 Act.4
- 09.1.11up
「錯」 Act.5
- 09.1.12up
「錯」 Act.6
- 09.1.16up
「錯」 Act.7
- 09.1.16up
「錯」 Act.8
- 09.1.17up
「錯」 Act.9
- 09.1.17up
「錯」 Act.10
- 09.1.18up
「錯」 Act.11
- 09.1.20up
「錯」 Act.12
- 09.1.21up
「錯」 Act.13
- 09.1.24up
「錯」 Act.14
- 09.1.27up
「錯」 Act.15
- 09.1.29up
「錯」 Act.16
- 09.2.1up
「錯」 Act.17
- 09.2.6up
「錯」 Act.18
- 09.2.12up
「錯」 Act.19
- 09.2.15up
「錯」 Act.20
- 09.2.20up
「錯」 Act.21
- 09.2.26up
「錯」 Act.22
- 09.3.9up
「錯」 Act.23
- 09.3.13up
「錯」 Act.24
- 09.3.20up
「錯」 Act.25
- 09.3.26up
「錯」 Act.26
- 09.4.7up
「錯」 Act.27
- 09.4.21up
「錯」 Act.28
- 09.5.6up
「錯」 Act.29
- 13.5.21up
「錯」 Act.30
- 13.5.22up
「錯」 Act.31
- 13.5.23up
「錯」 Act.32
- 13.5.26up
「錯」 Act.33
- 13.5.31up
「錯」 Act.34
- 13.6.2up
「錯」 Act.35
- 13.6.17up
「錯」 Act.36
- 13.6.19up
「錯」 Act.37
- 13.6.26up
「錯」 Act.38
- 13.7.11up
「錯」 Act.39
- 13.7.14up
「錯」 Act.40
- 13.7.19up
「錯」 Act.41
- 13.7.27up
「錯」 Act.42
- 13.8.13up
「錯」 Act.43
- 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結)
- 13.11.26up
「証」 (『錯』番外編)
- 13.12.28up
「聴」 (『錯』番外編)
- 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1
- 17.1.7up
Vol.2
- 17.1.7up
【瑠】シリーズ
- 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1
- 16.12.30up
「瑠」 Act.2
- 17.1.1up
「瑠」 Act.3
- 17.1.3up
「瑠」 Act.4
- 17.1.11up
Gift
- 頂き物など
取調室にて
-
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more
-
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【「錯」シリーズ】 > 「錯」 Act.44 (完結)
「錯」 Act.44 (完結)
13.11.26up
医師のハボックに対する診断は脊椎損傷、神経切断による下半身不随とのことだった。
軍務につくは疎か、日常生活を送るにも支障がある状態。
生命は取り留めた。
しかし私と共に闘い突き進むことは、今のハボックには不可能になってしまったということだ。
Dr.マルコーに繋ぎを取ろうとしたブレダから、彼がホムンクルスに拉致されたとの報告を受け、再び絶望が私を襲った。
それはハボックの生命を失うかと思ったあの恐怖とは異なってはいたが。
同じ時間を共に過ごすことが出来なくなるという、胸が塞がるような昏い哀しみ。
今まで私が知らなかった『愛する』ということ、『幸福』というものを教えてくれたのはハボックだった。
そして…今まで知らなかった『哀しみ』という、自分ではどうしようもなく説明の仕様もその対処法すらも解らない、切ない感情を私の中に生じさせたのも
またハボック、ただ一人だった。
それでも動揺を押し隠し、治らないと決まった訳ではないと言った私に
「捨てて行け。」と
「切り捨てて行け。」と
「諦めさせてくれ。」と
ハボックは悲鳴をあげた。
ああ、本当に駄犬だよ。お前は。
悲鳴をあげたいのは、泣き叫びたいのは私の方だと言うのに。
それがお前の優しさだと解ってはいるけれど。
私を、私の足を止めさせないようにお前が言ったのだとは解っているのだけれど。
それでも。
それでも。
もう、私はお前の瞳に護られることなく
進んで行かなくてはならないというのだぞ?
ヒューズを亡くし、お前を無くし。
それでも歩いて行かなくてはならないというのに。
なぁ。お前は、私がお前を無くして、
どう歩いて行けると思っているのだ?
どこまでお前は私を…きちんと『私』として見てくれないのだろう。
そんなに私が強いとでも思っているのかね?
こんなに…こんなにもお前を失うことに立ち向かえない私を。
悔しかったから
「置いて行くから追いついて来い。」
と言ってやった。
「私は先に行く。
上で待っているぞ。」
と。
だって悔しいじゃないか?
こんなに…愛して…いるのに。
お前がいなければ、私は自分の輪郭すら辿れないほど心許ないと言うのに。
勝手に私を諦めて…。
いや、違うな。
なんて勘違いだ。
とっくに私はハボックに愛想を尽かされていたのだった。
思わず自嘲の笑みが零れた。
しかし同時に涙が零れたことなど認められはしない。
だって悔しいじゃないか?
こんなに…私は…。
これは私の単なる未練だったか。
しかし、私の理想を後押しし、支えてくれると言った言葉は真実だったはずだ。
常に私に寄り添って、私を護ると言ったのはハボックだったはずだ。
その気持ちだけは信じられる。
その気持ちだけでは、もう…正直足りないのだけれど。
ハボックとのやりとりの後、軍服を持ってきた中尉に
「お渡しはしますが、お身体が心配です。
もう一晩だけでもここでお休み下さい。」
と、優しい声とはうらはらな厳しい瞳で厳命された。
すぐにでもここを去り、ホムンクルスと軍部の繋がりを調べたかったのだが。
私に限らず、中尉の命に背けるヤツなど誰もいやしないだろう。
仕方なく、もう一晩を病室で過ごすことにした。
それでもあれから一言も話そうとはしないハボックとはなんの会話もしようがなく。
やたら早い時間に配られる食事を黙々と口にし(こんな状態になっても、私はハボックの前では無理にでも食事をする癖が抜けなかった)消灯時間と、その後の看護婦の巡回をぼんやりと迎えた。
隣のベッドでハボックが静かに横たわっている。
それでも私が眠らない限り、ハボックも決して眠らないことを知っている。
眠った後も、深い眠りでありながら物音一つで目を覚ますことも。
いざという時の為に夜も決して床を平らにせず、ベッドの上半身を起こしたままで。
躰が自由に動かなくなった今も、手の届く所に銃を忍ばせて私を護り続けている。
私を護る為だけにそうしている。
そんなことすら、今となっては何もならないとは知りながらも知っている。
知ってしまっている。
そんなハボックだから。
そっと起き上がってハボックの傍らに立つ。
「無茶せんで下さいよ。」
ほら、お前は私の気配だけでそうやって。
「ハボ……ジャン。」
久しぶりに名前で呼んだら、込み上げそうになったもののせいで声が少し掠れてしまった。
少しの沈黙の後で
「せめて座って下さい。あんたの傷の方が酷いんスから。」
掛けられた言葉の通りに、ベッド脇の椅子に腰を降ろした。
「なんです?」
優しく問いかける瞳が笑っている。
まるで昼間の激情が嘘のように。
暖かいアズール。
泣きたくなるほど愛おしい瞳。
「ジャン?」
「はい?」
まるで恋人同士だったときのような、優しく穏やかなジャンの表情。
そして私も今、満たされた顔をしているのだろう。
どうしたことか、今まで抱いていた恐れや焦りが全く私の中から消え去っている。
ああ、こんなに閑やかな気持ちになれたのはいつ以来だろう。
「どうしたんスか?大佐?」
柔らかく問いかけるジャンに、
「うん。お前を愛しているよ?」
私も落ち着いた心持ちで、素直な心で言葉を告げることが出来た。
「は!? ぁっ!ってぇ!」
ほら、そんなに急に動いては傷に障るだろう?
「大丈夫か?
…なぁ、聞こえたか?
私は、お前を、愛しているんだ。ジャン。」
「な…いきなり何を…?」
なぜ後退ろうとする?
無理だろう。それは今のお前には。
「お前を愛しているよ。
どうしてもお前を諦められない。
…また私を…愛してはくれないか?」
何か言おうとしたジャンが、しばらく見つめているうちに噎せて咳き込み始めた。
水を渡してしばらく様子を見ていると、腹を押さえて痛がりながらもようやく落ち着いたようだ。
そんなに驚かせてしまったのだろうか。
「あー…の、大佐?」
「うん?」
「俺、ずっとあんたを愛したまんまっスよ?」
「…そうか。」
そうか、と何度も呟いてしまう。
…良かった。
思わずにっこりと笑った私をジャンが見つめている。
「ジャン、愛しているんだ。」
少し腰を上げて、なにか言いかけたように少し開いた唇に口づけをした。
「たい…ロイ?」
「お前言ったじゃないか。私がお前に口づけする限り、ずっと愛し続けてくれると。」
だから、と囁くとくしゃりと顔を歪める。
「ジャン?」
「俺…もう脚が動かないんです。」
「だから?」
それがどうしたと言うんだ?
「…あんたの側にいられない。」
俯いて、震える両手がシーツを握りしめている。
「戻ってこい。それまで待ってやる。
さっきも言っただろう?上で『待っている』と。」
「もう下半身が動かないんスよ?
それに…俺ぁ、あんたを抱くことも出来ない。」
そんなことか。
ああ…。そうだな。
そうだった。
『そんなこと』に私たちは随分惑ってしまったのだったな。
「ジャン、お前は私の躰だけが目的で付き合っていたのか?」
おどけて言ってみたが、少しわざとらしかっただろうか。
まぁ、私がそもそもジャンに惚れた時に躰が目的だったことはこの際置いておこう。
「んな訳ないっしょ?」
ようやく顔を上げたな。
なんだその情けない顔は。
「私はお前に抱かれることが出来なくても構わない。
お前自身を愛しているんだ。
むしろ行為が出来なくなったことで、もうお前を苦しめずに済むのが喜ばしいと思っている。
なあ、私はお前がどんな状況であれ、お前を愛して居るんだ。
これから私たちの愛し合い方を2人で見付けて行ってはくれないか?」
「ロイ?」
不思議そうな顔をしているな。
そんなにおかしいか?
こんなことを言う私は。
「お前の蒼い瞳が好きだ。まっすぐに私を映し出してくれる。」
口づけを一つ。ただ触れるだけの。
「お前の素直な心が好きだ。」
もう一つ。唇を啄むように。
「お前の魂が好きだ。」
ほら、少しは口を開いたらどうなんだ?
「お前の全てを…お前だけを愛している。」
今度はかすかな音を立てて、口づける。
「私の隣に、生涯居て欲しいのはお前だけなんだ。」
そうして、初めて私から舌を差し挿れた。
今までどうして触れるだけの口づけしかしなかったのか。
自分でも不思議だったが、ようやく解った気がする。
私はジャンを穢してしまうのではないかと、どこかで恐れていたのだ。
我が身に何者をも受けることは慣れていても、こんな自分をジャンの中に挿れること。
喩え口づけの時の舌であっても。
こんな穢れた自分のたった一部でもジャンの内に入れてしまったら、ジャンが穢されるのではないかと、愚かな信仰心のように恐れていたのだ。
それほどまでに、ジャンは私にとって大切な宝物だったから。
「…っふ。」
ようやく廻された腕に、絡められる舌に、心が満ちた。
ジャンの想いがその力強さから伝わってきたから。
ベッドの上に引き上げられ、何度も角度を変えて舌が痺れるほど口づけ合った。
「は…ぁ…。」
どれだけ口づけを繰り返したのか、唇が離れたときには幾分甘い溜め息が洩れた。
「…ロイ?」
「ん?」
ジャンの傷に障らないように気を付けてはいたが、力が抜けて抱き留められるままになっていた。
「本当に…俺でいいんスか?」
この駄犬。
飼い主の言葉くらい聞き取れなくてどうする?
「お前『が』いいと言っているだろう?」
すり、と逞しい胸に頬を擦り付ける。
久しぶりの無防備になれる、安心できる場所。
ジャンの腕の中。
「俺、あんたに苦痛を与えることは…もう出来ません。」
「ああ、嬉しいよ。」
「あんたに…痛みのない愛し方しかできないんすよ?」
「それは素敵だな。」
「あんたを俺の愛し方でしか愛せない。」
「最高だ。」
だからそんなに不思議そうな顔をするな。
なぁ、本当にそう思うんだよ。ジャン。
心から。
「私はお前にそう愛されたいんだ。そんな風にな。」
だから笑ってくれ。
「はは…。俺、間違っちゃったんすね。」
ああ、やっと笑ってくれたな。
しかしなんだ。
その情けない笑顔は。
「間違えた?」
「ええ。俺、あんたを…あんたの全てを肯定しなきゃいけないんだと思ってたんです。
あんたはナニも悪くないんだから。
だからあんたが持っちまっ…いや、持たされちまった性癖も『それでいいんだ』って伝えなきゃって。」
ああ、そうだ。
ジャンは私の全てを受け入れてくれた。
…受け入れきれなくなって苦しむジャンを見ていられず、別れを告げたのだった。
「でも違った。
それは俺とあんたで一緒に治していくべきことだったんだ。
俺達には俺達の愛し合い方があるって。
それこそ俺があんたに言わなきゃいけないことだったんスね。」
ジャンが間違えていたとは私は思わない。
しかしジャンがそういうのなら、それが真実なのだろう。
人を愛することを教えてくれたのは、ジャン唯一人なのだから。
では、これからお前の錯誤を正していって貰うぞ。
等価交換と行こうではないか。
「なぁ、ジャン。
お前のこれからを戴こう。
これだけ私が口づけをしたんだ。
一生分は前払いしたと思うぞ?」
顔を見上げ、更に戯けて告げてやると
「一生分、スか?」
くく、と笑った振動が頬に伝わってくる。
「ああ。」
「残念ながら足りませんね。」
む。駄犬のくせに、ジャンのクセに生意気な。
「私の口づけはそんなに安いか?」
おい。そんなに笑うと傷に響くぞ?
「No,Sir. ただこれだと俺が帰ってくるまで分くらいっスね。」
いつからお前はそんなに生意気になったのだ?
それは飼い主である私の責任か?
「ならば幾らでもしてやる。
お前の一生は私のものだ。」
もうお前にしか使わないだろう。
私のとっておきの笑顔をお前に向けた。
ほら、男を虜にする表情とはこういうものだぞ?
どうだ?ジャン。
随分前から、そしてこれからもずっと、これはお前だけのものなんだ。
笑いながら
何度も口づけを繰り返した。
何度も
何度も
笑いながら。
涙を堪えきれなくなっても
笑いながら
何度も
何度も
笑いながら
何度も
何度も。
終いには
二人で笑い声をあげながら
涙を流しながら
何度も
何度も
私は笑った。
雑種の駄犬だけれども。
私の飼い犬であるお前は
きちんと覚えていたな?
私の唇はお前だけのものなのだと。
そしてまた
口づけを
口づけを
口づけを
何度も
何度も。
笑いながら
泣きながら
何度も
何度も。
……堪えきれなくて嗚咽を漏らして
お前にしがみついて
そんな私を、お前はこの上なく優しく抱きしめてくれた。
「きちんと食事をして下さいよ?」
横抱きにした私の髪を梳いている。
そう言えばお前は、こうするのが好きだったな。
「解っている。」
肩に凭れて声の震えを抑えて応える。
「本を読むのも加減して下さいね?」
「…かっ…てる。」
「夜はちゃんとベッドで眠るんスよ?」
「…って…」
バカ犬。
もう応えさせるな。
「心配…ばっかさせ…スから。」
ほら、お前だってもうまともにしゃべれないクセに。
雫が頬に落ちてくる。
お前は涙まで暖かいのだな。
「ロイ…愛…て…ます。」
「ん…ん。」
「ロイ…。」
「ん…。」
ああ、ジャン。
お前は本当に暖かいよ。
お前が私に人を愛することを教えてくれた。
明日、私はお前のこの暖かい腕から出て
ここを去り
また戦いの場へ向かう。
そこにお前の瞳はないけれど。
私の横にはお前の場所がいつもある。
早く
一日でも早く
戻ってこい。
また
抱き合って口づけをしよう。
また
愛し合おう。
お前の愛し方を
私の知らない愛し方を
もっと私に教えておくれ。
fine
いつもながら思いがけず長文になってしまいましたが、こんな駄文に最後までお付き合い戴き、有り難うございます。
えー、終了まで、足掛け7年もかかってしまいました。
Act.28の後、長らくお休みを戴いてしまい申し訳ございませんでした。
ご感想を沢山戴きましたこと、とても励みになり嬉しかったです。
本当に有り難うございました。
えと、皆様には「だからなんだよ?」な話だとは存じますが、普段たまごっつはシラフのたまごっつ=『シラたま』が昼間だいたいの話を考え、夜に酔ったたまごっつ=『酔いたま』が文章を書きます。
が、この『錯』については何も考えていなかったのに、いきなり酔いたまさんが書き出しました。
(某数字SNSでのことだったのですが、正直翌日に読んで驚きました。)
なので酔いたまさんに言いたいのですが、
「そしてまた事件は起こったんだ。」
の引きで続きを書かなくなるのはやめて下さい。
いったいどんな事件のつもりだったんですか?
5年前の脳みそが欲しかったです。マジで。
でもあん時も、きっと何も考えずにその言葉を引きにしたんでしょうね。おそらく。
Act.29の内容がたいした事件でもなかったのは、そんな経緯がございます。
すみません。
なんも思いつきませんでした。
本当に沢山のお言葉をありがとうございました。
休み休みで怠惰な駄文書きではございますが、これからもお付き合い戴けると嬉しいなどと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します。
この後、番外編も作る予定でおります。
返す返すも、どうぞ宜しくお願い致します。
たまごっつ拝
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