F.A.SS -
「鋼の錬金術師」の二次創作
【基本のエドロイSS】 -
原作をベースにした、エドロイSSです。
時系列順に並んでいます。
(下に行くほど後の出来事になります。)
誰がために - (まだロイの片想い)08.06.25up
- (両想いでもお互い気付かない)08.6.26up
水の中の月 - (告白)08.6.29up
- 08.6.30up
- (初めての触れ合い。大佐が咥えるのみ)08.7.1up
- (初体験)08.7.11up
蹟(しるし) - (大佐から初めてのキスマーク) 08.7.16up
シチュー - (大佐が熱を出さなくなったあたり)08.7.16up
- (大佐が壊れてます。ちょっとギャグ)08.7.22up
フソク - (豆がいないと闇がぶり返す大佐)08.7.22up
摂取 - (「フソク」の続き。相変わらず闇に囚われている大佐と帰ってきた豆)
08.7.22up
Turn R
Turn E
幕間 - (ごめんなさいなギャグ)
08.8.8up
- (ヤってるときのエドVer. 「虚」と対になってます。)
08.8.8up
- (ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
- (「虚」の続き。どーしようもなくグダグダなロイ)
08.8.8up
- (兄さんと酔ってご機嫌の大佐。未然ジェラシー)08.10.25up
- (鬼畜い兄さん♪後、ヘタレ)08.10.25up
【遊 シリーズ】 -
パラレル。税務署長のロイと税理士のエド。

このSSは途中からRPG方式で、「遊」(ロイエドVer.)と「遊 脇道」(エドロイVer.)に枝分かれします。
但し、「遊 脇道」は「遊」本編と「遊 番外編」数本を包括した入れ籠構造になっておりますので、
「遊」→「遊 番外編」→「遊 脇道」の順に読まれることをお奨めします。
その順番にupして行きます。

「遊」vol.1〜vol.9 - 「遊」「遊 脇道」とも枝分かれするまで共通です。
「遊」vol.1 - 08.11.12up
「遊」vol.2 - 08.11.12up
「遊」vol.3 - 08.11.13up
「遊」vol.4 - 08.11.13up
「遊」vol.5 - 08.11.13up
「遊」vol.6 - 08.11.16up
「遊」vol.7 - 08.11.16up
「遊」vol.8 - 08.11.16up
「遊」vol.9 - 08.11.16up
「遊」 Vol.10以降(ロイエドVer.) -
ロイエドがお嫌いな方も、これはこの後のエドロイver.がこの「遊」のロイエドバージョンを含んだものですので、お読み戴ければ幸いと存じます。

「遊」vol.10 - 08.11.19up
「遊」vol.11 - 08.11.19up
「遊」vol.12 - 08.11.19up
「遊」vol.13 - 08.11.19up
「遊」vol.14 - 08.12.7up
「遊」vol.15 - 08.12.7up
「遊」vol.16 - 08.12.7up
「遊」vol.17 - 08.12.7up
「遊」vol.18 - 08.12.7up
「遊」vol.19 - 08.12.7up
「遊」vol.20 - 08.12.7up
「遊」vol.21 - 08.12.12up
「遊」vol.22 - 08.12.12up
「遊」vol.23 - 08.12.12up
「遊」vol.24 - 08.12.12up
「遊」vol.25 - 08.12.12up
「遊」vol.26 - 08.12.12up
「遊」vol.27 - 08.12.12up
「遊」vol.28 - 08.12.12up
「遊」vol.29 - 08.12.12up
「遊」vol.30 - 08.12.12up
「遊」vol.31 - 08.12.16up
「遊」vol.32 - 08.12.16up
「遊」vol.33 - 08.12.16up
「遊」vol.34 - 08.12.16up
「遊」vol.35 - 08.12.17up
「遊」vol.36 - 08.12.17up
「遊」vol.37 - 08.12.17up
「遊」vol.38 (これで完結です) - 08.12.17up
「幻」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。ロイVer.)
「惑」 (「遊」 番外編)(エドロイ) - 08.12.17up - (旧テレビアニメのラストから映画シャンバラのその後。エドVer.)
「遊 脇道」(エドロイVer.) - 「遊」Vol.10以降
こちらはエドロイバージョンのうえ、ロイが精神的に壊れてしまっています。
しかも暗いです。
弱いロイが厭だという方はお読みならないで下さい。
「遊 脇道」Act.1 - 08.12.17up
「遊 脇道」Act.2 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.3 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.4 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.5 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.6 - 08.12.19up
「遊 脇道」Act.7 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.8 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.9 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.10 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.11 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.12 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.13 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.14 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.15 - 08.12.21up
「遊 脇道」Act.16 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.17 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.18 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.19 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.20 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.21 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.22 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.23 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.24 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.25 - 08.12.23up
「遊 脇道」Act.26 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.27 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.28 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.29 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.30 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.31 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.32 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.33 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.34 - 08.12.24up
「遊 脇道」Act.35 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.36 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.37 - 08.12.26up
「遊 脇道」Act.38(とりあえず完結ですが、「澱」へ続きます) - 08.12.26up
「澱」 (「遊 脇道」完結話) - 08.12.26up - (「脇道」のロイVer. これで「脇道」の本編は終わりになります)
「寥」 (「遊 脇道」 番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (「幻」の割愛部分)
「仕」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (駅前相談するセンセイ)
「誤」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (ある日税務調査が…)
「加」 (「遊」番外編 エドロイでもどっちでも) - 09.1.7up - (本編に入れ忘れた生協の小ネタ)
「罪」 (「遊 脇道」番外編) - 09.1.7up - (そして今2人は)
「問」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 09.1.7up - (そして今2人はその2)
「策」 (「遊 脇道」番外編 エドロイ) - 16.12.29up - (あの夜の男は)
【その他 ロイ受】
「戯」 (ブラロイ) - 09.1.7up - (ロイにホムンクルスと知られ、別れを告げるブラッドレイ)
「蓮」 (キンロイ) - 09.1.7up - (イシュヴァールにて。意外にほのぼのかと…。)
「痴」 (エドロイ)(単発) - 09.1.7up - (淫乱ロイの純情)
「羞」 (エドロイ前提ハボロイ)(「痴」シリーズ?) - 09.1.7up - (「痴」の続編。エドを愛しているロイだが、ハボに…。いや、ハボは被害者なのですが。)
- 上下につながりはありません
「紅」 (エドロイ) - 09.1.7up - (久しぶりに司令部に来た兄さん)
【単発 ロイエド】 - (焦れたロイにレイプされるエド。18禁のレイプものですんで、ご注意下さい)
「赦」 Act.1 - 09.1.7up
「赦」 Act.2 - 09.1.7up
【単発 ハボロイ】
「憂」 - 14.10.16.up - (ロイとハボックの阿呆らしいすれ違い)
「今更」 - 09.1.7up - (自分の想いに気付くロイ)
「蜜」 - 09.1.7up - (恋人になった後。エロシーンばっか)
「背」 - 09.1.7up - (ハボの背中に惹かれるロイ)
【「錯」シリーズ】 - ハボロイオンリーです。
イシュヴァールでの経験がロイに与えたものは…。
- 今はなき某数字SNSで、2007年9月から書いていたものです。
「錯」 Act.1 - 09.1.7up
「錯」 Act.2 - 09.1.7up
「錯」 Act.3 - 09.1.11up
「錯」 Act.4 - 09.1.11up
「錯」 Act.5 - 09.1.12up
「錯」 Act.6 - 09.1.16up
「錯」 Act.7 - 09.1.16up
「錯」 Act.8 - 09.1.17up
「錯」 Act.9 - 09.1.17up
「錯」 Act.10 - 09.1.18up
「錯」 Act.11 - 09.1.20up
「錯」 Act.12 - 09.1.21up
「錯」 Act.13 - 09.1.24up
「錯」 Act.14 - 09.1.27up
「錯」 Act.15 - 09.1.29up
「錯」 Act.16 - 09.2.1up
「錯」 Act.17 - 09.2.6up
「錯」 Act.18 - 09.2.12up
「錯」 Act.19 - 09.2.15up
「錯」 Act.20 - 09.2.20up
「錯」 Act.21 - 09.2.26up
「錯」 Act.22 - 09.3.9up
「錯」 Act.23 - 09.3.13up
「錯」 Act.24 - 09.3.20up
「錯」 Act.25 - 09.3.26up
「錯」 Act.26 - 09.4.7up
「錯」 Act.27 - 09.4.21up
「錯」 Act.28 - 09.5.6up
「錯」 Act.29 - 13.5.21up
「錯」 Act.30 - 13.5.22up
「錯」 Act.31 - 13.5.23up
「錯」 Act.32 - 13.5.26up
「錯」 Act.33 - 13.5.31up
「錯」 Act.34 - 13.6.2up
「錯」 Act.35 - 13.6.17up
「錯」 Act.36 - 13.6.19up
「錯」 Act.37 - 13.6.26up
「錯」 Act.38 - 13.7.11up
「錯」 Act.39 - 13.7.14up
「錯」 Act.40 - 13.7.19up
「錯」 Act.41 - 13.7.27up
「錯」 Act.42 - 13.8.13up
「錯」 Act.43 - 13.11.22up
「錯」 Act.44 (完結) - 13.11.26up
「聴」 (『錯』番外編) - 最終話後、ツケを支払に行くロイ。
Vol.1 - 17.1.7up
Vol.2 - 17.1.7up
【瑠】シリーズ - 【注意書きです】
これはいつものロイエドロイと、また原作とも異なるパラレルのロイエドロイSSです。
(すみません!最初間違えて『ロイエド』と書いてましたが、ロイエドロイです。)
原作またはアニメ設定以外受け容れないと言う方はお読みにならないで下さい。
最初は「人魚」のタイトルでしたが、後に「瑠」にしました。
「瑠」 Act.1 - 16.12.30up
「瑠」 Act.2 - 17.1.1up
「瑠」 Act.3 - 17.1.3up
「瑠」 Act.4 - 17.1.11up
Gift - 頂き物など
取調室にて -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
give me more -
ヒューズ×ロイ from 志乃さま
> 【基本のエドロイSS】 >
(ヤってるときのロイVer. 「彩」と対になってます。)
08.8.8up
※ エドVersion 「彩」と対になっています。


「虚」


「なぁ…。咥えてるトコ、見せて?」
ベッドサイドの灯りを点けた少年が上気した顔で言う。

私を抱いているときに少年はそれらをよく見たがる。
言われたように少年のモノを口淫するのを見られるのも、快感に乱れる姿を見られるのも本当はかなり羞恥心をそそられて苦手だ。
少年はそれをよく知っている。
(抱いているときに言葉で私を煽るのもその現れだろう。)
しかし彼の願いは全て聞き入れたい。
むしろ彼が要望を口にしてくれることが嬉しい。
彼の思うとおりに出来るから。

少年に抱かれる。
それは愛されていることを躰でも感じられる至福の時であるが、同時に同性であることをまざまざと思い知らされる時でもある。

私にはやわらかく脹よかな胸もない。
彼を受け容れるべき本来の器官も持っていない。
少年の相手には似付かわしくない、鍛えられた傷だらけの軍人の躰。
それにいつも本当に欲情してくれているのか不安になる。
いつ彼に女性との正常な行為に目覚められてしまうのか。
いつ彼に飽きられてしまうのか。

女性のように自然に受け容れられる躰でないなら、せめて彼の望む通りにしたい。
だから少年の要求を受け、その通りの行動をしてみせることしか私には出来ない。

「ほんっと、あんたって…いつもは偉そうなクセにベッドじゃ従順だよな。」
その笑顔に嘲る色がないことをいつも確認してしまう。
言われた通り顔を向けて彼のモノを頬張る私の髪を優しく撫でてくれる。

最近は嘔吐(えづ)くことなく、咽の奥まで受け容れられるようになった。
ディープスロートと呼ばれるソレを女性から受けたことは、私もそれほど多くはない。
しかし強烈な快感を産み出すことを知っているからこそ体得したそれは、女性がするよりも男性が施す方が喉仏が刺激する分、余計に快感を与えられると聞く。
それが本当ならばこの男の躰であるからこそ、少年を悦ばせることが出来るのだろうか。
だとしたらそれはとても喜ばしいことだ。

咽深くまで咥えたために顔を見せられなくはなったが、不満の声は聞こえなかった。
「なあ?」
今度はどうしたのだろう?
口腔にまで少年のモノを戻して少し顔をあげた。
「顔に掛けてもイイ?」
いつもは飲み下していたが、そういうことをしたがる年頃か?
過去の自分を思い出し、少し可笑しかったが咥えたままで頷いた。
「ん。じゃ、も少し咥えてな?」
まだ少年が達せないことは触れている私にも解っている。
また咽の奥まで咥え込み、きつく咽を絞めて抜き差しする。

「あ…っ!ロイ!」
声が聞こえたと同時にそれを離し、射たれた液体を受ける。
生温いというよりも熱く感じるそれが勢い良く顔にあたり、垂れていく。
ああ、目を瞑らない方が少年はよかったのだろうか。
小さな後悔をしていると
「ごめんな。イヤだったか?」
気遣わしそうな声が聞こえた。
何を言っているのだろう?
少年が望むことで厭なことなど有りはしないのに。
「厭ではないが。
 これは…どうしよう?」
顔から垂れて落ちる液体を指で掬って舐め取った。
少年の放ったモノをただ拭き取ることなど惜しくて。

「そんなことしなくていいって!」
慌てて拭ってくれようとするが、もったいないじゃないか?
つい、と顔を少年の手から逸らす。
「いつもあんた、飲むと咳き込んでるからさ。
 だから…いや、見てみたかったってのも事実だけど…。」
私を思い遣って言ってくれていたのか。
少年の優しさに胸が暖かくなる。
「君のを飲むのは嬉しいが?
 で、ご覧になった感想はいかがかな?」
嬉しさを押し隠して笑って返すと、紅い顔をした少年が
「オレのなんか飲んで楽しいかよ?
 えー、すんげぇイヤらしくて堪能しました!
 ホント、凄く艶っぽくてイイぜ?
 あんたの顔。」
それでもにやりと笑って言う。
「精液にまみれた男の顔がか?
 ご婦人の方がそそるだろう?」
ああ、言わないようにしていたのについ口から零れてしまった。
なんだか情けなくなって、脱ぎ捨てた自分のワイシャツでそれを拭い取った。
顔を見られないように。
「あ?あんたの顔だからオレはそそられるんだけど?」
君はそう言ってくれるが。
自己嫌悪で言葉が紡げなかった。

「次はあんたな。」
少年が黙ってしまった私の躰を引き上げて仰向けに転がす。
小さくても(と言えば暴れ出すのだろうが)鍛えている少年の力は強い。
年に見合わない程の筋肉質な肉体も私が愛するものだ。
一番は金色の強い光を放つ瞳だが。
「君はそんなことをしなくていい!」
私のものを咥えようとした少年を慌てて引き剥がす。

何度か少年にもしてもらったことはあるが、なるべく断るようにしている。
男の身で咥えることなど屈辱的だろうから。
(私は愛する少年のモノを口淫するのはもちろん厭ではない。)
女性を抱くのであればしなくて済むことを、少年がする必要はない。

「なんで?」
不満そうに言われた。
「私はいいから。」
理由を誤魔化すために一つ呼吸をして(なにしろ恥ずかしいのだ)
「もう…欲しいから。」
やっとのことで告げる。
顔が熱い。
きっと真っ紅に染まっていることだろう。
それを本音の為と捉えた少年が上機嫌になる。
よかった。

「じゃあ俯せになってな。」
私の腕を引いてひょいとひっくり返す。
四つん這いになると
「腕はいいから。」
楽しそうな声とともに背中を押され、顔をシーツに埋めさせられた。
上半身をシーツに付け、腰だけを上げる姿勢は恥ずかしくて本当に厭なのに。
「…っ!」
思わず抗議の声をあげそうになる。
「なぁ…イヤ?」
知っていて少年がワザと問いかけてくる。
「…。…厭では…ない。」
少年に抱かれて初めて口にするようになった言葉だ。
今までの私には言う必要の無かった言葉。
厭なら厭とはっきり言ってきたし、いいのならいいと言えば良かっただけのことだったから。
ここで「好きにすればいい。」などと口にしたら、優しい少年はすぐにでもやめるだろう。
それは解っている。
だからこそつい
「厭ではない。」と答えてしまう。
彼の好きなようにして欲しいから。

「ホントにあんたって…。」
苦笑するような声が聞こえたが、シーツに頬をあて黙って瞳を瞑った。
ぬるつく粘液を絡めた指が後孔に触れてくる。
一番苦手で、最も少年に申し訳ないと思う時間だ。
女性のように感じれば濡れるということのない躰。
用意をしなければ受け容れることすら不可能な躰。
それを思い知らされてしまうから。
少年に手間を掛けさせるのが申し訳ないので、自分で済ませてくると言っても聞いてくれたことがない。
「オレがしたいんだからやらせろよ。」
いつも笑って言う。
それはやはり少年の優しさなのだろう。

「…ァ…ッ!」
胎内の感じる部分を少年の指が触れてくる。
話には聞いていたが、これを体感させたのも少年だ。
抑えようも無く躰が揺れ、それにつれ腰が猥らに動いているのを少年に見られている。
理性が壊れそうなほど感じているのは事実だが、それ以上に眩暈がするほど恥ずかしい。
こんないい年をした男が乱れているのを見て、呆れないのだろうか。
私だったら萎える。
少年以外の男なぞ裸を見るのもごめんだ。

「もう…鋼の…。」
見られたくない。
せめて挿れている時は背中を見られるだけで済むだろう。
そんなことは既に思考の片隅でしか考えられていないのだが。
少年に触れられれば触れられるほど生じる、この圧倒的な焦燥感と欠乏感はなんなのだろう。
少年が欲しくて堪らない。
貪欲なまでの欲望。
今まで知らなかった感情。
少年が私に植え付けたのか、もともと有ったその存在を知らしめたのか。

「もう…いい?」
少年の息も乱れている。
ああ、よかった。
今日も私に欲情を抱いてくれているようだ。
「ん…。」
小さく頷くとそっと熱を押し当てられる。
「挿れるぜ?息を止めるなよ?」
少年を受け容れるべく、覚えた呼吸で痛みと躰の強張りをなるべく逃していく。
抱かれる悦びに比べればささいなことだとは思うが、それでもこの時の苦痛が無くなることはない。
少しずつ挿れては動きを止め、少し戻してはまた私の強張りが緩むのをまって少し進めてくる。
最奥まで収めるのに焦れったいほどの時間を掛け、私に負担を与えないようにしてくれる。
少年に気を遣わせ、思うように欲望をぶつけることなく我慢させてしまうのがいつもながら申し訳なく、また厭だと思う。
私の躰など壊れても構わないから、いっそのこと自分の思う通りにしてくれればいいのに。
女性であったらさせないで済む苦労を強いているのだと再び思い知らされる時だ。

少年を受け容れる悦びと苦痛と申し訳なさで、いつも涙が零れるのを止めることが出来ない。

「もう…動いてもいいか?」
いつものように最後まで挿れてからしばらく時間を置き、私の内部が馴染むのを待った後で気遣わしげに聞いてくる。
泣き声を聞かれるのが厭で、黙って頷くと
「つらかったら言えよ?」
優しく背中を撫でてくれるのが嬉しいが哀しい。
女性だったらこんな気を遣わせることもないのに、と。

それでも少年が挿送を繰り返すと、すぐに増す苦痛は躰の奥から生じるより大きな愉悦に取って代わられる。
「…ァ!…ん…ぅ…」
押し殺しきれない声があがってしまう。
「ああ…ロイ。」
魘されたような声が更に私を煽り、躰の熱が上がる。

抜き差しされるまま揺れる躰の下腹にそっと手を添えた。
ここに少年のものが入っている。
少年を身に収めて心の底から感じる嬉しさ。
これはきっと受動の性を選んだときから、私の内に生まれたおんなの気持ちと同様のものなのだろう。
身を委ねる少しの怖さと、それを全て征服される悦び。
それは少年が私に与えたもの。
思えば私の躰に男を受け容れることを教えたのも、男に与えられる快感を教えたのも少年だった。

それでもこの行為に意味など存在しない。
今以上のものを育むことのできない関係。
これ以上のものをなにも少年に与えられない関係。
私の躰には少年が与えてくれるものに等価交換できるものが何もない。
彼が触れれば痺れるような快感を得る胸も、その存在に意味はない。
女性のように男性を惹きつけるなだらかな隆起もなく、授乳することも出来ない。
少年が精を放つ胎内にも、なんの存在意義もない。
ただの排泄器官だ。
少年の精を受けて子を成すことも出来ない。
意味のない器官。
意味のない躰。
意味のない私。
少年に愛される意義のない私。
それでも少年を欲しがるのは原則に反する私の我が侭でしかないのだ。

「あ、ほら。自分でするこたないって。」
私の手が自分の快楽を追っていると勘違いしたのだろう。
彼の手が来る前に下腹に充てていた手を慌てて自分のモノへと動かした。
少年を受け容れて悦びに浸っていたなどと女々しい自分を知られたくないから。
切ない虚しさに苛まれていたことなど、もっと知られる訳にいかないから。
別の意味で等価交換の原則に反して優しさを私に与えてくれるこの少年に。

そっと私の手を外して少年の手が私を更に追い上げていく。
幽かに残っていた理性を手放して、少年の与えてくれる悦楽に溺れることにした。
もう何も考えずに少年を感じたいから。
「ん…。ァ…ン…ッ…」
「声…抑えるなって…。」
滲んだ意識に聞こえて来る声。
ああ、少年が望んでいるんだ。
声を…。
それでも嗚咽に似た声をあげることに躊躇してしまう。
「イイよ。ロイ。すげえ感じるよ。あんたんナカ、熱くてすごくイイ…。」
最後の枷が少年の言葉で外される。

「ぁ…!ぁア…ッ!」
自分の耳を塞ぎたい程の淫らな声で啼いてしまうのを抑えられない。
くちゅぐちゅと、喩えようもない淫靡な濡音が少年を受け容れている箇所からあがる。
その音にさえ煽られて堪らない。
何度も快楽を産む箇所を擦られ突かれ、抑えられずに躰がひくつく。
その度にまた嗚咽に似た猥らな声を更に張り上げてしまう。
も…う…限界だ。
精神と違い、素直な躰が悲鳴をあげていた。
「ぁ…!ァ…鋼…の…!」
もう少年には解ってしまっている。
私が彼を呼ぶときは達したくなった時だと。
「ああ、イくぜ?」
一際激しく突き上げられて、押し留めることも出来ずあられもない声をあげ続けて背を反らす。
「ァ…!ぁ…くっ!鋼の!」
びくびくと躰を痙攣させて飛沫を迸らせた。
同時に内部を濡らされ、更に躰が震える。
躰の奥底から溢れ出る悦び。
彼の熱い精を受けて感じることはその一つだけだった。

「あ…ロイ…好きだ。」
達した後の荒い息の中、譫言のように告げられる言葉が性感帯に触れられる以上の快感を私にもたらす。
ああ、嬉しい。
今日も君が私で感じてくれたことが。

「私も君を…愛している。」
そう告げた後、まだ大丈夫だろうと思っていた私の躰が、つと意識を手放しそうになった。
「…?」
戸惑った視線を向けた私に返ってきた言葉は
「中尉が最近あんたがちゃんと休んでないって言ってたぜ。
 後始末はオレがするから、眠れ?」
いつの間に副官と交わされていたらしい内容だった。
甚だ不本意ではあったが、久しぶりの安堵とともに訪れた眠気に抗うことは難しい。
「明日も…まだ旅には出ないか?」
という問いかけに
「ああ。
 明日は休みを貰ったからゆっくり眠れよ。
 オレが側にいるからさ。」
私の愛する笑顔とともに返されてしまっては、私に嫌も応もない。
「ん。愛してるよ、鋼の。
 お休み。」
「ん。お休み。ロイ。」
優しい口づけを目蓋に受け、ついぞ覚えたことのない安らかな眠りに私は落ちていった。
少年の熱を躰に感じながら。

愛しているよ。
鋼の。
明日もまだ…君は私を愛してくれるかい?



          fine


061210


んな理由で大佐はベッドでは従順です。
って、どんだけあんた、自分に自信がないのよ?
んっとーにうちの大佐はヘタレで…。


「慈」へ


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