no.7 Cat's Eye

Nesting Dreams


身体中に感じる心地よい温もりの正体は何かと探る。
何故だか俺の視界は暗黒に遮られて、
朧の清らかで平穏の雰囲気に満たされている。
慣れ親しんだ気配が俺を抱きしめると同時に、
重量感のある乳房を胸元に感じる。
熱く尖った切っ先がその興奮を伝え、
耳元に絡みつく吐息が己の興奮を優しく誘い出す。
リードを取り、この気配を縛りつけ組み敷くのは自分だと思っても、
何故だか猛る心が根こそぎ殺がれている。
どうしたことだろう。
立ち上がる自分の器官が愛撫され、
熱く蕩ける肉の厚みに納められている。
緩やかに刻む動きの中で、一体どれくらいの安らぎを
この行為で得たことがあったろうかと考えられるほどの、充足の結合。
蠢きの中で気配の喜びを感じ、その喜びが己の幸福に循環され、
魂が繋がりあうような一体感。
何も考えず、ただそれに身を任すうちに、
闇の中に浮かぶ一条の光、猫目石の直線のごとく俺は落ちていった。


彼の指が私の肌をなぞる、綿を掴むよりも優しく慎重に。
手のひらと指がわたしの姿をうつつに際立たせる。
なのにわたしはそれが心地良くて
自分の実体が溶けてしまうような熱を内側から感じている。
慈しむようなその触れようが、
私が触れて欲しいと望む人がするようなやり方では
きっと無いのだろうと想像しながら。
私の意識は既に身体とは離れ、
遠い虚空で愛しい人を叫び望んでいる。
唇を合わせるだけで涙が出てきてしまうような強い喜びを、
温もりを布一枚も間に入れず身体中で感じあう幸せを、
何故私は手に入れられないのだろうと意識は泣き狂う。
そして、そんな欲望をひた隠しにしながら
喧嘩腰になる自分を嫌悪する。
もっと触れて。もっと私を感じて。
あなたにならなにをされても、いい。
私を熱くさせている彼の行動は、私の核心に触れてゆく。
滑り込む指先がそれでいいんだと言わんばかりに私の喘ぎを誘う。
止まらない。
この指が彼の指であったならと思った瞬間に私は爆ぜ、
そのまま意識は白色の猫目石に一直線の黒が描かれるように
急激に天上へのぼっていった。


あれは、夢だったのか?


香、お前を守ると決めてから
超えることが容易でなくなった最後の一線の
ブレイクスルーの先にあるものは、
この生業を続ける限り生きている間には絶対に得られないと
思っている安寧の楽園なのだろうか。
お前が笑顔で居るならば、それ以上を望んではいけないと思う
自分の心の枷が見せた幻なのだろうか。
ただ生きている、それだけでも俺にとっては上等だと思っている
この幸福よりも、もっと素晴らしいものがある暗示なのだろうか。



あれは、想像の産物だったのかしら?


望み欲しながら、最後の一線を越えることの出来ない
わたしたちの世界は宝石のようにキラメキながら、
今日も生きている。
遼、傍に貴方が居る事が、私の幸福。
それを忘れてはいけないと思いながら、
さらに大きな幸福を求めてしまう自分の気持ちを、
もう止めてはいけないということなのかもしれない。
生きている限り、自分の幸せを追い求めることを止めたくない。
素直になりたい。









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071025

入れ子のように同じ夢をみながら二人は煩悶。




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