no.39 ふたり

Midnight Rain(ミッドナイト・レイン/夜半の雨)

 
 ブラインドから漏れる光の筋を辿ると
 薄闇に浮かび上がった
 灰鼠色の背中に赤く滲む一条の新しい傷跡。
 煙草に火を付けるため、デュポンを手に取る。

 耳に残る周波数の独特の高い音は
 どんなに音量が小さくとも
 つかの間の休息を得ている男を起こすのには十分だ。


 「god damn you...How long did I fall asleep? Ryo?」
   (畜生…俺はどれくらい落ちてた?)

 「a little bit, Mick.
  your face was like an angel,really...」
 (少しだな。ホントにおまえの寝ている顔は天使だよ…)


 嘲笑を喉にこびり付かせながら、
 ガバリと起き上がった男の姿態をからかう。
 数刻前まで、熱い汗の滲んだ背中は
 今は殺意に満ちて収縮し、
 いつでも飛び掛る臨戦態勢になっている。


 ミックを見据えたまま、一言で刺す。

 「if you want, do it」
 (やりたきゃ、やれよ)

 「No.I'll kill you between the sheets.
  I want hearing your voice begging me deeply.」
 (いやだね。おまえをシーツの間で殺すんだから。
  おまえが俺を求める声を聞きたいんだよ。)


 冷たい笑いを同量、返される。
 女の肌のぬくもりは彼らの間には無い。
 寄り掛かりでもなく、愛などと簡単に表せるものも無い。


 それなのに
 文字通りの荒野の中で、生を許す雨を降らす男は
 目の前の男だけなのだと、お互いが知る。

 硝煙の香りが濃密に立ち込める中で
 ブラインド越しに漏れる灯りの先は
 


 闇。















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060613

勿論サントラから題名いただきました。


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