no.2 パートナー
Without You(あんたは居ない)
日没からこっそりと施錠を解くような
知る人しか訪れぬ酒場に、死神たちは訪れる。
誰もが脛に傷を持ち、探られたくない過去を持つ。
その日暮らしのポケットにある小銭が
明日を約束することも無い。
名前も知らぬ、隣の男がべらべらと語る儲け話に
信憑性を見出す方が難しい。
衛生観念からは程遠い店内には
埃と何かを燃やす煙が立ち昇り
視界は夜の闇よりも禍々しい何かで遮られる。
誰もが酩酊しているようで
時折見せる眼の光が、それをまやかしだと告げる。
弛緩の皮をまとった野獣たちの緊張は
度数の高い酒程度ではおおよそ癒されることは無い。
表向きはバウンティハンターとして名高かった
ケニーが死んだと、
隣に座った悪魔が誰へともなしに囁く。
賞金首稼ぎにとって
狩りの相手を殺してしまうのは、
あまり名誉を勝ち取れることではない。
彼の狩りの真髄は、致命傷を負わせながら
殺さない残酷さにあった。
接近戦にせよ、銃を使うにせよ
dead or aliveと指定された人間に
ふさわしいものは、死の直前を見せる永遠の責め苦。
生きたまま地獄を見せる死神として
ケニーに狙われた人間が自殺を試みた話も
枚挙に暇が無かった。
_ ケニーの死に様は決闘だったそうだ
_ 娘は施設に預けられたそうだぜ
_ 誰がアイツを屠ったんだ
_ 黄色いヤツだったらしい、ケニーに纏わりついてたアイツか?
_ babyfaceとか呼ばれていた男かね?
あんな甘そうなやつにケニーはやられたってのか?
地に堕ちたもんだ、伝説のバウンティハンターもな…
独り言の連鎖が酒場に満ちる。
先に逝った同業者を少量の羨望と共に弔うために
目前のグラスを傾ける男たち。
薄汚れた暖色の光すら届かぬ影の一角で
囁き声ひとつ漏らさず聞いている
黒い髪の死神が居たことなど
誰の記憶にも残る事は無い。
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060627
ワイルドターキーヨウロウノターキー
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