no.13 傷跡

The Six Sence(シックス・センス/第六感)

 
 臭気を撒き散らす汚泥の気配を纏い
 男は私の前に現れた。

 単独で請けるには
 心もとなかったハイリスクの依頼。
 私の提示する金額の3倍の報酬が
 私の命の金額だと分かった。


 依頼内容を聞いた時点で選択の余地など無い。
 一匹狼を気取るアジア人種の腕利きが欲しかった。

 中国人は嫌い。
 報酬の増減に聡く、イレギュラーな状態が
 発生しがちなこの手の厄介ごとに対して、
 すぐに金勘定を始めるから。

 鷹揚だけど、依頼内容は完璧以上に
 こなす男を見つけねば、私が死の淵を意識せずに
 この仕事を完遂することは恐らく無理だろう。


 情報筋にそれとなくリクルートを流す。
 浮かんできたのは経歴不詳の日本人。


 「mary, be careful. he'll eat your heart…」
 (マリー、気をつけな。あんた心食われるよ)


 指定されたのは郊外のモーテルの一室。
 周囲に斥候を置けるような
 茂みすら無い荒野に佇む一軒宿。

 ドアの前に立ち、軽く深呼吸をしてノックをする。


 「come in」(入れよ)


 全裸の男が立っていた。
 その長身、筋肉質の肢体、男根の大きさ、表情、
 どれもが私の想像する”日本人”とは真逆を行く男。

 「you don't need my bodycheck,ah?」
 (ボディチェックがいらんようにしておいたぜ)

 
 胸元に赤い薔薇のごとき傷跡。
 この男は真っ向から殺意を受け
 そして生還し、ここに立っている。


 すべてを一瞥し、私は決めた。


 「so,let's make some agreement before business…」
 (仕事の前に、契約を交わしましょうか…)


 男は何も言わず、私の唇を奪い、衣服を剥いだ。












  
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060627

絶対ブラッディマリーさんとリョウさんは
イイ仲だったんじゃなかろうか。
ちゅうより男女パートナーでソレが無い方がレアケース?

マリーさんは「中国の人嫌い」と
言っていますが、志乃がそう思っているかというと
全く 違 い ま す のでご容赦ください。

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