albums (20/21)
残りのページを2人で見つめていく。
自分の中で行った感情の開放は
穏やかな気持ちで残りの写真を見つめる、大事な行為だった。
枚数が多かったわけではない。
真白のままの残ページが、
彼女の人生が突如絶たれたことを表していた。
終わってしまったわ・・・と思いながら冊子を閉じれば
数枚のポラロイド写真が、アルバムから滑り落ちる。
「白いドレス・・・白いスーツ・・・?
結婚式の時に着るもの・・・。もしかして、これ・・・」
婚姻の記念写真用に、どんなデザインのドレスとスーツを選ぶか。
とんでもなく時間がかかったまどろっこしいリョウのプロポーズ後、
香さんのテンションは異様ともいえるくらい高かった。
そりゃそうよね。女の一大イベントだったものね。
私も嬉しかったなあ・・・
最近の流行なんて、一番縁遠い私まで(うわぁ、いたたたっ!)
相談しにきてくれたわよね・・・。
貸衣装屋へ何度も行くのを嫌がるリョウに、
事前に候補を教えるべく、撮られたであろうポラロイド写真。
・・・ほんと、アイツ、バカね。
今度は、ちゃんと、私が、ケツひっぱたかなくちゃ。
何事も、タイミングを間違えてはいけないのだと。
静かに頬を伝い落ちるもの。
それは、悲しみではなく、私の決意の表れだと、思いたい。
「サエコ・・・冴子姐姐(サエコジェジェ)・・・
これ、香マーマが着るはずだった、ものか?」
「そうよ・・・」
「わたし、いつか、これを着れるの、か・・・?」
「さあ。それはわからないわ。誰かを見つけなくちゃならないしね。
あなたは香さんじゃないから、リョウパーパとは結婚できないし」
「ケッコン?bloodstain?」
「そ れ ち が う わ よ」
「・・・わかっている、言ってみただけだ」
あら。一本してやられたわ。
会話を通して、かすかに感じる、私と香螢ちゃんだけの世界。
「阿香(アシャン)・・・
私はあなたを、愛称としても香さんとは呼べないの。
だから、私はあなたを・・・そうね、あーちゃんって呼ぶわ。
いつか、あなたの中に居るってみんなが言う香さんを
ちゃんと私も受け入れられるようになったら、
あなたの呼び方が変わるかもね」
「冴子姐姐が、私に、あーちゃんって名前、つけてくれた・・・」
あーちゃん、あーちゃん、と口に出して確認しては
うっすらと笑みを浮かべる彼女の姿。
そう、どんどん笑って。
ひとは、嬉しいとき、涙も出るし、笑えるのよ。
香さん、私に託してくれたこの子の笑顔、
あなたにも見ていて欲しい。
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