albums (17/21)
大きく引き伸ばされた、一枚の写真。
中央に、私。
自分でも驚くほど、大口を開けて笑っている。
隣に、優しい眼差しで私を見つめ、肩を寄せる槇村の笑顔。
香さんは私に背中を向けて、食べ物を皿に取りながら、
ファインダーに向かって笑って話しかけている風情。
周囲には踊るおねえさんたちや
床でへべれけになって昏倒した男たち。
リョウが刻んだファインダーの中にも、私が居た。
槇村と一対の鶴のように寄り添う構図を見事に捕らえた瞬間。
その私の傍らに、香さんが居る。
ただリョウに向かって、優しい笑顔と視線を向けて。
大切な、戻らぬ日の光景が
リョウの眼差しと共に私の脳裏に再生される。
止めることの出来ないしゃくり上げが喉を刺激し、
私の中にあった濁流が出口を求めて溢れ出す。
身体の芯から震えが起き、
こめかみが万力で締め付けられるように痛む。
この一枚を、大きく引き伸ばし、
3冊目の新しいアルバムの
最初のページに貼り付けた香さんの気持ちが、私を包み込む。
背中に感じる暖かいぬくもりが
私の意識を、今居るところに強く引き戻す。
香螢ちゃんが、私を強く、抱きしめていた。
目が合うと、そこには、
なぜかしら見覚えのある、口元のカーブ。
笑みを浮かべているような、香さんの顔。
錯覚に違いない。
もしも今ここに香さんが居たら、
そうして欲しいと感じることを
香螢ちゃんが私の気持ちを読み取って、
行動しているのだと思いたい。
ぬくもりの確かさに、私はとうとう素の自分をさらけ出す。
言葉には出来ない感情を叫びに乗せ、涙と共に吐き出していく。
香螢ちゃんの胸元の移植痕に頭を寄せ、
そこに居るという香さんに向けて届くようにと。
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