きっかけはいつもと同じ、ほんの些細なこと。

女刑事が持ってきた依頼を相談も無しに受けたとか、それを秘密にしてたとか。

例によって彼女はたいそうご立腹で、膝を抱え視線はテレビに向けたまま、

先程から一言も発しようとしない。



リスクばかりが高くて報酬なんて期待できないからか、

俺の身を案じてのことか、

色気の権化みたいな刑事への嫉妬からか・・・

あるいはその全部かもしれないが、そんなことはどうでもいい。



俺のせいで、俺のために、激しく感情を揺らす。

そんな彼女が、欲しくてたまらない。



いきなり後から抱きしめたりしたら、きっとまた顔を真っ赤にして怒るんだろうな。

でも、まぁ、それもいい。

笑ってる顔も良いが、怒ってる顔も、最高に綺麗なんだ。

お前は気づいてないだろうけど。



息を潜めて背後から近付き、ゆっくりと廻した腕に力を込めると、彼女の体が少し強張った。

何やら喚きながら俺の腕から逃れようともがいているが、俺から逃げられるわけがない。

敵わないとわかると、彼女はお得意のハンマーを取り出した。



ハンマーの2つや3つ、甘んじて受けてやる。

だからもっと綺麗な顔、見せてくれよ。

俺だけが知ってる、特別綺麗なあの顔が見たいんだ。



今すぐ、ここで。 





『ウツクシイモノ』  <2006.05.10.> 







◇◇アトガキ◇◇

惚れて惚れて惚れぬいたた相手だから、怒った顔だって可愛く見えちゃう。
大人の余裕と恋愛フィルターの合わせ技。
要は ラブラブで幸せ ってこと(だと思う)。

♪:Shiver(MAROON5)